子ども・生活・成長

イネイブリングって何?

《2015年2月1日》

 奥田健次先生は臨床心理士、専門行動療法士であり、行動分析学者です。子どものさまざまな問題行動を、常識にとらわれないオリジナルのプログラムによって改善させることで知られています。40歳を少し過ぎたくらいですが、これまでの相談実績は数万件にのぼり、難しい案件を解決してきた手腕から“子育てブラック・ジャック”などとも呼ばれています。テレビのドキュメンタリーなどでその活躍ぶり、独特の指導法に触れたことのある方もいらっしゃるでしょう。

★奥田健次著『世界に1つだけの子育ての教科書』

B 教育界、療育界でちょっと異色の存在である彼が最近、これまた一風変わった子育て本を出しました。『世界に1つだけの子育ての教科書』(ダイヤモンド社)という本です。

 自閉症やアスペルガーといった専門領域の著書のほかに、これまでも子育て本を何冊か出していて、そこにもけっこう刺激的な文言がありましたが、本書には「はっきり申し上げますが、こんなことをしていると、本当に、子どもがダメになってしまいます」と大きな太字で書いてあり、これまで以上に歯に衣着せずに書かれた本だという印象があります。

 サブタイトルは「子育ての失敗を100%取り戻す方法」。10歳までの子育てに悩む人に贈る一冊ということで、発売直後で、アマゾンの子育て本ランキング1位に。出版記念の講演会があるというので出かけました。

 講演会では本書のところどころを取り上げて、より詳しく解説してくれるという手法が取られました。本と同じでズバズバと鋭い突っ込みが放たれますが、関西人ならではのジョークもたっぷりで、笑い声も響く会でした。

 私が特に聞きたかったのは、第5章についてです。章のタイトルは「『過保護・過干渉』の子育てが、あなたの子を腐らせる」。なんとまあ刺激的な表現でしょう(笑)。それはさておき、そこに付いていたサブタイトル「“イネイブリング”をやめよう」が、とても気になったのですね。

 過保護・過干渉をいさめる本はいくつもあります。だけど、イネイブリングって何? イネイブリングをする人をイネイブラーと言うそうですが、耳慣れないイネイブリング、イネイブラーについてもっと詳しく聞いてみたいと思ったのでした。今回は私が学んできたことを皆さんにおすそ分けしたいと思います。

★子への気遣いのはずが、悪循環のモトだった

 本書では例として、幼稚園で吐き気を訴える年長の女の子が出てきます。お母さんからの相談です。職員室で休ませてもらうことが続き、その後は朝から吐き気を訴えて登園したがらず、昼ころには回復して家でゲームなどで遊んでいるが、どうも幼稚園に行きたくないようだ、と。

 奥田先生は園でその子に対する「いじめ」「いじわる」「からかい」などがないことを入念に確認し、どうやら集団が苦手だということから始まった問題だと判断しました。そうであるなら、早いうちに(小学校の不登校に結びつく前に)幼稚園には行くものだという習慣づくりをすることが大切だと主張します。大人であれば自分で考えて方向修正することも可能だけれど、子どもの場合は周囲にイネイブラーが存在するケースがほとんどなので、イネイブラーによるイネイブリング自体を取り除くことが先決だというのです。

 さぁ、出てきました。イネイブリング! 実はこのイネイブリング、アルコール依存とかギャンブル依存とかの依存症患者の治療などに使われる専門用語だそうです。意味は、「ある行動ができるような状況をつくってしまうこと」。

 依存症患者の場合で言えば、家で深酒をして注意され、逆ギレしてグラスを床に投げつけて割ったけれど、家族が翌朝までに片付けてあげたり、サラ金の借金を肩代わりして返済してあげたりすることがイネイブリングです。依存症患者がしでかしたことを、なかったことにしてしまい、患者がまた同じ行動を取ることを許してしまっているのですね。

 これを、前述の登園しぶりの女の子に置き換えて考えてみましょう。女の子が吐き気を訴えると、お母さんは「大丈夫?」と心配し、「今日は休もうか」と気遣い、園には「子どもの体調が悪いので休ませます」ときちんと連絡し、そしてゲームがしたいと言えばさせてやる――これは結果的に、「吐き気を訴えなさい、そうすれば園に行かなくて済むから」「体調不良でいなさい、そうしたらゲームをやらせてあげるから」と、親のほうが子どもに願ってしまっている図式だといいます。親は本来、登園を望んでいたはずなのに、実際には“共犯者”だった。これがイネイブリングなのですね。共犯者となったお母さんはイネイブラーです。

 イネイブラーは「なんとかしてあげたい」という強い心配からつい手助けしてしまいます。私がなんとかしなければという責任感も強くあります。だから、まさかそれが良くないことだとは気づかない。しかしこの対応こそが、悪循環が長く続いてしまう原因だったのです。

 小学生でも同じです。子どもが「学校に行きたくない」と言ったとき、仮にその理由が前日ゲームをして夜更かしし、眠くて起きられないという場合、イネイブラーのお母さんは学校に電話して「行きたくないと言っています」と正直に伝えることはしません。「具合が悪いので病欠します」と連絡してしまいます。正直に伝えたら、後日子どもが先生に怒られてかわいそう、中学受験の内申書に響きそう、自分の監督責任が問われて恥ずかしい、などの気持ちが沸き起こり、無意識のうちにイネイブラーの行動を取ってしまうのです。

★取引と報酬は違う

 愛情あふれる気遣いのつもりが、良くない対応だったとは皮肉な話です。では、どうすれば良かったのか。

 奥田先生いわく「もしそんなにゲームが好きなら、幼稚園に行った日だけゲームをやらせてあげればいい」。毎日登園できるようになったら、職員室で休まずに過ごせた日だけやっていい、と少しずつ変化させる。最初は集団が苦手だったこういう子どもたちの多くが、登園を続けるうちに気の合う友達を見つけたという実例が、奥田先生の元にたまっているそうです。

 そして「教育学的“そもそも論者”は、園の楽しみを感じさせるのが先決であってゲームを使うなんて、と言いますが、そういう人たちが何をどう直してきたのか、聞いたことがない」とバッサリ。奥田節全開です。

 ちなみに、この「~できたらゲームをやってもいい」は、取引ではないとのこと。取引とは、子どもが泣いて暴れて要求してきたりしたときに、あれこれ応じてしまうこと。そうではなく、子どもが期待どおりの行動を実行できたという結果に対する「報酬」だと考えれば良いそうです。だから行動分析、行動療法ということなのでしょうね。

 本書には、園に協力を求めて問題行動を直していく方法や、ほかの事例もたくさん載っています。とても書ききれないので、関心のある方はご一読をお勧めします。

★単語が認知される日は近い?

 そういえば以前、幼稚園でこんな場面がありました。5月ころの年少さんのクラスでした。降園時間になってお母さんがお迎えに来たAくん、お母さんの顔を見るなり、通園カバンが重い、持ってくれとぐずぐず言い始めました。先生が「Aくん、幼稚園に入ったのだから自分で背負って帰れるはずよ」と励ましますが、お母さんはすぐにカバンを肩からはずしてやって、「いつまでも赤ちゃんみたいにわがままで…。早くしっかりしてもらいたいんですが」と恥ずかしそうに言います。Aくんはカバンを渡したあとも、いつまでもぐずぐず言っています。これ、毎日繰り返されている光景。

 少し離れたところで見ていた園長先生が「お母さん、カバンを受け取らないで門のほうに歩き始めればいいんだけどなぁ。そろそろ伝えたほうがいいかなぁ」とつぶやきました。

 このお母さんも、今思えばイネイブラーだったのです。重いと言っているのだからかわいそう、カバンを持ってやらなければぐずぐずがもっと長引くはず、と、良かれと思ってやっていたのでしょう。もしかしたら、早くしっかりしてもらいたいという思いの裏に、甘えてくれてかわいいという気持ちもあったかもしれませんね。

 園長先生がお母さんに話をしたところには立ち会っていませんが、「お母さんがカバンを持ってあげることが、ひいてはAくんが降園時に毎度ぐずぐず言ってもいいという状況をつくりだしている」と説明するにはけっこう長い時間がかかりそうです。それよりも、「お母さん、それ、イネイブリングですよ。やめましょう」と言ってわかってもらえれば、すごく簡単! このイネイブリング、イネイブラーという単語、何やら急速に認知される日がやってくるような気がするのは私だけでしょうか。

 なによりもまず、休日、昼過ぎに起き出してきた息子に「ご飯食べる?」と聞くような我が身を振り返るところから始めなくては。

(文:西東桂子/絵:山本花子)

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「初体験」の価値

《2015年1月1日》

 明けましておめでとうございます。2015年のスタートです。今年はどんな年にしたいとお考えでしょうか。

 私は50歳になったころから、「今までに経験したことのないことをやってみる」ことを意識するようになりました。つまり、初体験のすすめ、ですね。「継続は力なり」ですから、長く続けることにも大きな価値がありますが、トシだからと新しいことにチャレンジしないのはもったいないなと思ったからです。

 といっても、何も大上段に構えなくとも、たとえば新作映画を見たり、本を読んだり、話題のレストランに出向いたり、旅に出たりすれば、初めて見る映画、初めて読む本、初めて味わう料理、初めての土地ですからすべて初体験になりますね。初対面の人と交流するのだっていい。大人になると、新しいことは家の中より外に多いので、出不精にならずに外に出ていこうという所信表明でもあります。

 近年の大きな初体験は、一昨年、仲間たちと一般社団法人を設立したこと。終活をテーマにしながら、“50歳を過ぎたらボランティア精神で”を合言葉に、得意分野で社会貢献していこうと作った団体です。設立から1年半が過ぎましたが、ここでの取り組みはすべてが初めての体験で、失敗や反省も多いのですがやりがいがあります。

 また、昨年の初体験で印象深いのは、東京ドームで都市対抗野球の応援をしたこと。全国から予選を勝ち上がってきた企業や役所のチームが東京ドームで激突するのですが、プロ野球とはまた違った独特の熱気がありました。友人が勤務する地方の企業チームが決勝トーナメントに出場することになり、上京した友とともに応援しましたが、私も社員になったような気分で、試合が終了したときには声が嗄れていました。忘れられない体験です。

 今年も、新たな体験を積み重ねていきたいと思っています。

★子どもは毎日が新しい体験

Photo トシをとってくると、こうして意識して動かないとなかなか新しいことに出会えませんが、子どもは違います。すべてが初めての体験と言ってもいいくらいですね。

 入園すると、登園したら上履きに履き替え、カバンをロッカーにしまい…といった繰り返しの事柄はもちろんありますが、先生が「初めての○○にチャレンジするのは今でしょ!」とばかりに発達過程に合わせた教育(遊び)をタイミングよく導入していくのは、親にはなかなか真似できないプロの仕事です。

 年少のころには無理でも、卒園するころには縄跳びができたり、ルールのある遊びができたり、みんなで相談できたり、相手を思いやることができたりと、見違えるように成長していきます。

 家庭や家族での初体験もたくさんありますね。初めての食材を口にしたり、初めて野菜の皮むきをしたり、包丁を使ってみたり。お母さんに折り紙を教えてもらったり、お父さんと自転車の練習をしたり、家族で遊園地に出かけたり、朝日が昇るところを見たりと、「初めて」がどんどん積み重なっていきます。

 でも大人と違うのは、子どもの「初めて」のほとんどは、子ども一人では体験できない点です。つまり、親が付き合ってあげて初めて、子どもの「初めて」が成立するのです。それを面倒だと思ってしまうと負担感が増しますが、親にとっても「子どもと一緒にやる初めてのこと」ととらえれば、ともにわくわく感を楽しめるのではないでしょうか。

★「初めて」に慎重な子どももいる

 ある年の4月のこと。幼稚園に入園してきたAくんは一人っ子で、外遊びよりも部屋遊びが好きな子どもでした。声をかけて園庭に誘い、「すべり台で遊ぼうか」と言うと、「僕、いい」。「ジャングルジムはどう?」と言っても「ううん、いい」と、砂場にへばりつきます。ちょっとした予感があったので、「先生、そろそろすべり台に行ってみたくなったなあ」と何度か誘ってみると、「僕、高い所が怖いから、いいの」。あら、やっぱり!

 Aくんのお母さんからとても慎重なイメージを感じ取っていたので、もしかしたら「高い所は危ないから気をつけてね」という子育てをしていらしたのかもしれません。

 「先生が付いていてあげるから、絶対怖くないようにしてあげる」と約束し、最初はすべり台の階段を上るのはやめて、私がすべり台の横に立ち、下から1mほどの所から体を支えたまま下まで移動することから始めました。これを何度も繰り返したあと、次に、瞬間的に私が手を離し、1mをすべり下りる間に3回ほど支えるという段階を経て、次は下から2m地点からスタートして同じことを繰り返しました。

 この幼稚園のすべり台は階段の上にけっこうなスペースがあるので、次には一緒に上って、お友達が次々にすべり下りていくのを横目で見ながら、上で長い時間おしゃべりして過ごしました。そしてようやく、「それじゃあ、階段を下りようか。それとも、先生のお膝の上に乗って一緒にすべってみる?」と声をかけてみると、「下までずっと一緒? 絶対離さない?」の確認のあと、とうとう一緒にすべることができました。

 この日、私が付き合ったのはここまで。担任に話をつないでおいたので、その後数日は担任が一緒にすべってあげたようです。1週間後に行ったときはAくんのほうから「僕、すべり台、すべれるようになったよ」と報告してくれて、時々ブレーキをかけながらでしたが、上から一人ですべってみせてくれました。

 子どもの性格は一人ひとり違います。新しいことに物怖じせずに挑戦していく子もいますし、新しいことには慎重な子もいます。どちらも個性です。わが子が慎重なタイプだった場合、ほかの子と比べて「情けない」とか「臆病ね」と思って終わりにするのではなく、「慎重なんだな」と認めて、最初の一歩の不安感を取り除くお手伝いをするのが親の務め。園では先生がフォローしますが、おうちでの体験を増やしてあげられるのはお父さんお母さんです。

 慎重なタイプの子どもほど、「初めてできた」喜びは人一倍大きいものです。それが自信につながり、やがて「ちょっと不安だけど、頑張ってやってみようかな」という意欲につながっていきます。

 「今年は何をやってみる? 今から楽しみだね」「今年はお母さん、あれやってみたいな。一緒にやってみようよ」――お正月にそんな会話を親子でぜひ交わしてくださいね。幼児期にしかできない体験を逃してしまわないように! 素敵な一年になりますように。

(文:西東桂子/絵:山本花子)

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お年玉考

《2014年12月1日》

 今年も残すところ1か月。来年の話をすると鬼が笑うとか言いますが、来年になってからでは遅いのでお許しいただくとして、今回はお年玉の話題。

 幼稚園児には早いと思い、お金の話、お小遣いの話題は本コラムでは取り上げてきませんでしたが、お年玉のやりとりを始めているご家庭は多いことと思います。わが子に、甥っ子や姪っ子に、親戚の子に、お年玉をいくらあげようかと悩んだこともあるのではないでしょうか。仮に「わが家ではお年玉は小学生になってから」と決めていても、園児のわが子にお年玉をいただいてしまったら、どうします? 相手のご家庭にも小さなお子さんがいれば、お返ししなくていいのかと悩ましいことでしょう。

 今回は、私の周囲で、お年玉の金額ルールをつくっているご家庭の例をご紹介します。

★年齢が基準 その1

B Aさんのお宅では、お子さんへのお年玉は幼稚園入園後のお正月から渡し始めたそうです。基準は元旦時点での年齢×100円。3歳なら300円、6歳なら600円です。

 小学生になると、この基準額に一律1,000円が加算されます。7歳なら7×100+1,000=1,700円、12歳なら2,200円ですね。

 中学生になると、加算額が2,000円にアップします。13歳なら13×100+2,000=3,300円、15歳なら3,500円です。

 高校生になると、加算額は3,000円に。高3時、18歳のときが最大額となり、お年玉は4,800円です。早生まれだと4,700円が最大で、100円損したと思うかも? その後、専門学校、短大、大学に進んでも、お年玉はナシ。その年齢で就職する人もいますから、お小遣いは自分でアルバイトをするなりして稼ぎなさい、という方針です。

 ちなみにこのAさんは、私立幼稚園の園長先生です。お子さんたちはとうに独り立ちしていますが、将来生まれてくるかもしれないお孫さんに対しても、このお年玉ルールを踏襲しようと決めているそうです。

★年齢が基準 その2

 じぃじのBさんは、年長組の男の子を頭にお孫さんが4人います。息子さんと娘さんそれぞれに2人のお子さんがいて、同居はしていません。初孫が幼稚園に通い出した頃、「お年玉の額はその年その年で考えるのではなくて、どの孫に聞かれても明確に答えられるような基準をつくったほうがいいな」と思い至ったとか。

 Bさん宅のお年玉は、幼稚園年少では1,000円、年中では2,000円、年長では3,000円と、毎年1,000円ずつアップしていきます。これでいくと、中1のお正月には10,000円になり、以後はアップせず10,000円の定額制となって成人したら終了、という計画なのだそうです。

 4番目のお孫さんが中1になってからの数年間はお年玉で40,000円が飛んでいくことになりますし、5番目、6番目のお孫さんが誕生するかもしれず、年金暮らしのじぃじにはなかなか厳しい額?

 「いやいや、やり繰りもまた楽し、ですよ。やり繰りできなかったら何か仕事をみつけてでも、お年玉は確保していきたい」とBさん。もしかしたら、この心意気が老け込まない秘訣なのかもしれません。

★年齢基準のアレンジ版もあり

 Aさん流よりはもう少しお年玉をあげたいけれど、Bさん流の額だとちょっと厳しいかな、と思うのであれば、年齢基準をアレンジするやり方もあります。たとえば、
  幼稚園時代は年齢×100円、
  小学校時代は年齢×300円、
  中学校時代は年齢×400円、
  高校時代は年齢×500円、
  以後20歳(あるいは大学卒業)までは一律10,000円、
というふうに。

 このやり方は、ご家庭のお財布事情に合わせて臨機応変に額を変更できるところが長所です。また、年齢が基準なので、上の子からも下の子からも文句が出にくいという面もあります。

★年齢なんて関係ない! 今年は西暦何年?

 4人の子持ちのCさんの口癖は、「俺より子どものほうが小遣いをたくさんもらうなんて、おかしいぞ」です。大学生にだって1万円なんてとんでもない、と(笑)。子だくさんパパ、頑張れ!

 Cさん宅では子どもの年齢とは無関係に、お年玉の額が決まっています。もらえるのは幼稚園入園後からで、どの子も一律で「西暦の額」。つまり来月のお年玉は「2015円」というわけです。毎年1円ずつしか上がっていきませんし、もらう前から額は決まっていますから、子どもたちの側にいわゆる“わくわく感”はないのですが、パパはこのルールをいとこや親戚の子どもにも等しく適用したため、「そういうもんだ」と文句も出ないといいます。

 文句が出ないどころか、この家の長女(すでに成人)に話を聞くと、「確かにわくわく感はなかったけれど、パパ、いつも頑張って働いてくれてありがとうという気持ちになった。私が高校・大学に入るときは3歳下の妹の中学校・高校入学と重なり、妹のときも3歳違いの弟と重なるわけで、入学金や制服の準備など経済面で大変だったと思う。一番下はまだ小さいし。お年玉はもらえるだけでありがたかったですよ」と言っていました。

 パパの頑張りはちゃんと伝わっていたようですね。

 もらう額が100円だったり1,000円だったりする園児時代のお年玉ですが、ルールづくりは今のうちが肝心なのかも。小学生ともなれば、親からのお年玉は、愛情とわが家のお財布事情を伝えるかなり有効な手段になると言えそうです。

 お年玉の額をママだけ、パパだけで決めず、夫婦で語り合う話題にしてみてください。
 では、どうぞよいお年を。

(文:西東桂子/絵:山本花子)


夏休み中にお片付けの達人になろう

《2014年8月1日》

 最近、整理収納アドバイザーの方のお話を聞く機会が偶然2件続きました。片付けが得意とは言えない私にとって、「へぇ、なるほど」と思う話題がいっぱい。今回はその中からいくつかご紹介しましょう。時間がたっぷりある夏休み、親子でお片付けをするよい機会では?

★片付けが苦手なママの子は、やっぱり苦手?

1  整理収納アドバイザーの有賀照枝さんは、整理収納のコンサルティングを依頼されて、子どもがいるご家庭によく出向きます。アドバイザーに依頼するくらいですから、片付けが苦手だと自覚しているママだということでしょうが、有賀さんは最近感じることがあると言います。それは、「ママが片付けが苦手だと、子どもも苦手」ということだそう。

 でも、がっかりするのは、まだ早い!
 ここで言う「子ども」は小学生以上を指しているとのことです。幼稚園児が片付けが苦手だとしても、それは単に片付け方を知らないだけなので、基本を教えてあげると、ママより早くコツを飲み込むのだとか。

 その理由を書く前に、まずは片付けの基本ルールを押さえておきましょう。有賀さんは、「要らない物を捨てるのはなかなか難しいので、まずは分けることから」を勧めています。使っている物と使っていない物に分け、使っていない物を処分するかどうかは後で決めればいいのです。

●片付けの基本ルール

1、ある場所を選び、そこにある物をすべて1カ所に出す(ここでは子ども部屋を例にとりましょう)。

2、使っている物と使っていない物に分ける。たとえば子どもに、使っているおもちゃと、使っていないおもちゃに分けさせる。おもちゃ以外の子ども用品は、「1年間で使った物、使わなかった物」でママが仕分け。

3、使っている物を、今の暮らし(住まいの広さなど)に合う量にする。基準は「おもちゃ箱3つまで」など収納スペースに合わせて決めるか、「○○は何個まで」と数で決めるかのどちらか。使っていない物は、段ボールなどにしまい、後日判断。

4、量が決まったら、グループに分ける。たとえば「アイテム別…ぬいぐるみ、絵本、ブロックなど」、「場所別…引き出し、クローゼット、押入れなど」、「目的別…通園用の物、習い事用の物など」、「使用頻度別…毎日、週1回(習い事)、季節(水着、コート)など」。

5、すべての物の置き場所(戻す場所)を決める。

6、決めた場所に収納していく。収納ケースなどのグッズを買うのはこの段階がよく、きちんとサイズを測って買う。先に収納グッズを買うのは失敗のもと。

7、最低でも年に1回は見直す。進級した、下の子が生まれたなど生活の変化に合わせて、物の量や分け方など、土台から見直す。

 この2番のところの「使っている物と使っていない物に分ける」作業で、いちばん手際がいいのが幼稚園児なのだそうです。ママや小学生は、「う~ん、どっちに分けようかな」と悩んでしまうことが多いと。悩むママに、幼稚園児が「ママ、それ全然使っていないよ。使っていない物のほうに入れなくちゃ」とアドバイスすることがよくあるそうです。反対に、子どもが「使っていない物」に仕分けたおもちゃを、ママが「え~、ダメよ、それ高かったんだから」と口出しすることも。

 有賀さんは、幼稚園児の割り切りの良さを「人生経験が少ないぶん、迷いが少ない」と表現しましたが、肝心なのは、「迷いが少ない年齢のうちに、片付けの習慣をつけてしまうこと」なのです。

 もちろん、子どもが迷いなく仕分けてしまった物のうち、「捨ててはいけない物、近い将来また必要になる物」はママが判断し、その理由を説明してあげてください。逆に、子どもが残した物をママが勝手に処分するのは厳禁で、子どもの判断を尊重して、よく相談してくださいね。

★物を大量に買い込む理由は「不安」

 有賀さんによると、片付けが苦手な人はやはり物をたくさん持っているそうです。なぜ物が増えてしまうのか?

 いちばんの理由は「不安から」だそうですよ。収納整理が苦手な人は、収納アイデア本をいっぱい買い込んで場所をふさいでいる(でも読むわけではない)。掃除が苦手な人は、掃除グッズを山ほど持っている(でも活用していない)。太っていて膨張色の服を着ることに不安を感じる人は、黒色の似たような服ばかり買い込んでしまう(でも着ない服も多い)。ファッションセンスに自信のない人は、これは似合うと思うと同じ服を色違いでたくさん買い込んでしまう(でも着ない服も多い)。いかがです? 心当たりのある人も多いのではないでしょうか。

 上記の1番で、場所を決めてそこにある物を全部出すというのは、自分は何に不安を感じて物を買ってしまうのかを客観的に理解するための作業です。不安のもとがわかれば、次の買い物のときに自制することができますね。

 単に「買い物好き」の人もいますが、上記の3番で「今の暮らしに見合った量」を一度でも考えたことがあれば、抑止力になります。

★要らない服を仕分けるには

 整理収納アドバイザーの丸山俊江さんは、要らない服を仕分けるのによい方法を教えてくれました。クローゼットにかけてある服の中から選んで着たら、右端に戻す。次の日に着た服も、また右端に戻す。これを習慣づけると、そのシーズンに着なかった服が左側にたまりますから、その中から喪服などの必需品を除いた物が不用品。これ、私もやってみましたが、一目瞭然で判断できますのでお勧めですよ。

 クローゼット以外でも、収納ケースや引き出しでも同じやり方ができます。着た服をいちばん右の収納ケース、いちばん上の引き出しに戻して、やってみてください。子どもの服も同様にやってみると、左側(いちばん下)に残るのは子どもが嫌いな服や小さくなった服です。下の子に着せようと思うなら、今は使わないので段ボールへ。あるいはお友達に譲ったりバザーに出すなどして処分しましょう。

★片付けの効果は

 片付けをすると、家の中がすっきりしますね。居心地よく感じるものですが、それには理由があります。人間の五感のうち、視覚が占める割合が83%もあるからです。脳科学的に、視覚を通して感じる心地よさは絶対的に大きいと証明されているのだそうです。外出先から帰宅して、ぐちゃぐちゃの家を目にすると身も心も休まらず、自分を痛めつけているのと同じなのだとか。

 なかには「片付いていなくても平気」というママもいるかもしれませんが、「それは麻痺しているだけ」と有賀さん。「すっきりした環境に身を置いたことがないからですよ。片付けてみて、初めてわかるものです」。

 さぁ、夏休みを有効に使うしかありません。あ、言い忘れましたが、最も重要なのは、基本ルールの5番、6番です。使い終わったら、必ず決めた収納場所に戻すこと。「後で」はいけません。そうすると、探し物をしなくなる、転倒・防火など危険回避につながる、などなどおまけがたくさん付いてきます!

(文:西東桂子/絵:山本花子)


親と子のお出かけマナー

《2014年5月1日》

 お出かけ日和のいい季節になってきましたね。今年のゴールデンウィーク、どんな計画を立てていらっしゃいますか?

 親子での外出は、けっこう周りから注目されているようです。少し前の記事ですが、2年前のちょうど今頃、日経新聞土曜日別刷り「NIKKEIプラス1」の「何でもランキング」で、親子の振る舞いについて取り上げられていました。2年たっても、内容的にはちっとも古びていないと感じます。

 親子の「どうかな」と思う振る舞いと、「いいな」と思う振る舞いがそれぞれ10位まで挙げられていましたが、ここでは「どうかな」のほうだけご紹介することにします。(2012年4月中旬調査。20代、30代、40代、50代、60歳以上で各200人の計1000人。男女同数)

★電車や飲食店で騒ぐ子をなんとかせよ!

 親子の「どうかな」と思う振る舞いワースト10は以下のとおり。

第1位 電車や飲食店で子どもが騒いでいるとき、自由にさせる
第2位 おもちゃや服、靴の片付けを親がやる
第3位 お店で自由に商品にさわらせる
第4位 外出中、親が携帯電話に夢中
第5位 食事の際、子どもがゲームをしている
第6位 外出先で子どもが泣いているとき、そのままにする
第7位 混んでいる電車やバスで優先座席に子どもを座らせる
第8位 他人の前で子どもとしゃべるとき、赤ちゃん言葉を使う
第9位 子どもの学校の成績を自慢する
第10位 子どもの宿題を時々親がやる

Photo_2  第1、3、4、6、7位は外出中のこと。第5、8位も外出中にあり得ることで、10項目中7項目もが「お出かけマナー」に関することと言ってよいと思います。私もそうですが、外出先では、ちょこちょこ動き回る子どもにどうしても目が行ってしまうので、感じる事柄も多くなるのでしょう。

 このランキングからは、子どもが騒いでいても泣いていても、我関せずで携帯電話(スマホ)に夢中になっている親――そんな情景が浮かび上がってきますね。いえいえ、あなたのことではありません(笑)。

 でも、お出かけ時は子どもにさまざまなことを教えるビッグチャンスでもあるのですし、何より、親子でのお出かけは子どもにとって最高の楽しみです。スマホではなく子どもの手を取って、目を見て、実のある親子の会話を交わしてほしいものです。

★正しいマナーを事前に子どもに話しておく

 子どもにお出かけマナーを身につけさせたいと思うなら、たとえば電車やバスなどの公共の乗り物を利用するときに、「こういうことをするのは、こういう理由でいけない」と、事前にきちんと話しておくことが肝心です。一度言ったから大丈夫と思わず、乗るたびに事前確認をします。

 たとえば、「車内で動き回っていると、急に止まったときにケガをするから、つかまって動かずにいようね」「大声を上げたり泣きわめいたりすると、眠っている人や具合の悪い人、本を読んでいる人たちの迷惑になるからやめようね」「子どもは元気だから、お年寄りや具合の悪い人に席を譲ろうね」というふうに。また、「ケガをしたら、お出かけは即中止。それはがっかりだよね」「あなたが具合が悪いときに、すぐ近くで大声を出されたらイヤでしょう?」と自分のこととして考えさせると、伝わりやすくなります。

 幼稚園の遠足やお泊まり保育などで公共の乗り物に乗るときにも、先生は事前にマナーを話して聞かせます。「遠足に行けるのは元気な子どもだからだよね。元気だから座らずに立っていられるはずだけど、やれるかな?」といった先生の言い方は、親にも使えますね!

 2~3歳以下だと言ってもわからない場合や、体力がまだついていなかったりして立っているのが難しいこともありますが、年中組くらいになれば言って聞かせれば頑張ります。マナーを教えもせずに、まずい場面になったときに頭ごなしに叱ったのでは、子どももたまったものではありません。

 あるとき、こんな体験をしたことがあります。電車に乗って座っていたところ、たまたま私の目の前に、おばあちゃんと5~6歳の男の子の二人連れが立ちました。車内はちらほらと人が立っているくらいの混み具合です。私は男の子に言いました。
 「おばちゃんね、おばあちゃんに席を代わってあげたいと思うんだけど、ぼくは立っていられるかな?」

 彼が「うん」と答えるのを聞いてから、私は席を立ちました。子どもにかかわる仕事をしているから臆面もなく言えたことかもしれませんが、子どもは話せば理解するものです。ただし、頭ではわかっても、ぐったり疲れていたら立っているのはもちろん、機嫌良くしていることすら無理なので、子連れのお出かけは疲れ切る前に、余力を残して帰路につくのが得策です。

★権利の主張だけでなく配慮も忘れまい

 話は変わって、国交省ではベビーカーをたたまずに電車やバスに乗ることを認めるという発表をしました。子育て世代にやさしい社会であってほしいと願っていますから、このこと自体は一歩前進と言えるでしょう。
 でも、ここにもマナーは必要だと思うのです。

 私が普段よく使う私鉄電車は、先頭車両が混雑し、ラッシュアワーの混雑度は200%を超えるかというほど殺人的です。ある日、朝の通勤時間のこの先頭車両に、開いたままのベビーカーが乗っていました。向かい合わせのドアの真ん中辺だったのでその辺りには手すりもつり革もなく、ベビーカーの周りに立ってしまった人は押されても体を支えるものがなくて、赤ちゃんの上に今にも倒れ込みそうな按配です。

 乗り換えターミナル駅に着くと、さらに人が乗り込んできます。ホームからはベビーカーのある辺りが空いているように見えるため、「中に詰めろよ」と罵声が飛びます。そのとき、降りた人が駅員さんに告げたのでしょうか、乗り込む客を制して駅員さんが車内に入ってきて、ベビーカーの持ち主の若いママに「ここは危険だから」と一旦降りるよう指導がありました。ママは素直に従いましたが、ベビーカーを降ろしてから乗客が乗り終えるまで電車は数分間停車して遅れが出ました。

 どうしてもこの時間帯に電車に乗らなければならない事情があったのでしょうが、せめて後部の比較的空いている車両に乗るとか、車内では抱っこひもを用いて抱っこし、ベビーカーはたたむとか、ママ側に配慮があってもよかったなと思います。ちなみに、車内でのおんぶは後ろが見えないのでお勧めしません。

 また、車内ではありませんが、最近の新聞投書欄に道路での出来事が載っていました。58歳の女性ですが、友人と道を歩いていたら、後ろから突然大声で「どけよ」と怒鳴られたとか。ベビーカーを押す30代くらいの男性だったそうです。この女性は心臓に持病があり、突然の大声に驚いたあまり過呼吸気味になって、道端で休んだと書いておられました。もしかしたら道幅が狭く、女性二人がのんびり歩いて道をふさいだ格好だったのかもしれません。それでもいきなり「どけよ」ではなく、「すみません」と穏やかに声をかけることもできたはずですね。

 子育て世代には自分たちが社会的弱者だという被害者意識が強いかもしれませんが、高齢者も、病気の人も、みな社会的弱者です。弱者同士が優位を言い募っても意味がありません。社会全体がお互いを尊重し合い、サポートできる側は率先してサポートし、サポートされる側も感謝の気持ちをもって周りに配慮する。それが本当のマナーでしょう。そういう方向をめざしていきたいものですね。

 世の中のことを考えるとき、いつも“幼子怒るな、いつか来た道、年寄り笑うな、いずれ行く道”という言葉を思い出します。私たちは独りで大きくなったわけではなく、導いてくれた親や大人がいて今日があります。今は想像できなくても、いつかは年寄りと呼ばれる日が来ます。柔軟な想像力こそが、社会をやさしくしていくのだと思います。

(文:西東桂子/絵:山本花子)


赤ちゃん返りの子にどう接する?

《2014年3月1日》

 幼稚園在園中に弟や妹が生まれる、というケースはよくありますね。
 弟妹の誕生を心待ちにしていて、紙おむつを持ってきたりと楽しそうにお世話をする子がいる一方、「僕(私)にも目を向けて~」とばかりに赤ちゃん返りをして、赤ちゃんへの嫉妬をあらわにする子もいます。

 最初はいいお兄ちゃんお姉ちゃんぶりを見せていたのに、ずいぶんたってから赤ちゃん返りをする子もいて、親は対応に右往左往してしまうことも。それが入園や進級、学期の変わり目の時期に重なると、「登園しぶり」という形で現れる場合もあり、親はますます困惑します。

 赤ちゃん返りを見せる子どもにはどう接していけばよいのでしょう?

★赤ちゃん返りの子どもの心中は

Photo おうちに赤ちゃんがやってきたとき、上の子はどう感じているのでしょうか? 臨床心理士の先生がたに取材すると、それまで自分とお母さんが1対1で完結した融合した世界で生きてきたのに、突然、異分子(=エイリアン)がやってきた――そんな感じなのだそうです。異物がやってきて、お母さんがそちらに半分以上のエネルギーを注いでいるという不愉快さの中にいます。お母さんが妊娠中に「もうすぐお兄ちゃん(お姉ちゃん)になるよ」と繰り返し言って聞かせ、わかったような顔をしていたとしても、大人が思うようには理解していないのです。

 弟(妹)と自分との展望が持てず、どうしていいのかわからないのに「お兄ちゃん(お姉ちゃん)でしょ」と言われることに理不尽さを感じています。それでも子どもなりのプライドはあり、こういう振る舞いを期待されているんだろうということはわかるから、行動や気持ちの上で過剰に頑張りすぎて、あるとき限界点を超えて爆発してしまった結果が、赤ちゃん返りです。

 人間はストレスにさらされると、かつて安心を得られていた状況に戻ろうとするのだとか。幼児なら、泣いたり、指しゃぶりをしたりと赤ちゃんと同じようにして、かまってもらおうと考えます。思春期の子どもでも、歳の離れた弟妹ができたときに、急に親に相談を持ちかけたりして気を引くことがあるんですって。おかしいのは、お父さんにも赤ちゃん返りがあること。中には赤ちゃんに嫉妬して、「靴下はどこだ」と、一時期妻に当たり散らすお父さんもいるそうです。

 つまり、赤ちゃん返りはよくあることで、心配しすぎなくてよいということですね。臨床心理士の先生がたは、赤ちゃん返りは発達上の健全なステップだと言っています。たまたま赤ちゃん返りがなかったら、それはラッキーということです。

★上の子への接し方

 赤ちゃん返りの“症状”としては、前述した「よく泣く」「指しゃぶり」のほかに、「イライラして当たり散らす」「いたずらをして気をひく」「抱っこをねだる」「自分も哺乳瓶を使いたがる」「安心毛布、安心ぬいぐるみなど特定のものを手放せなくなる」などがあります。

 こんな様子が見られたら、次のような対応を心掛けましょう。

1、叱らない、からかわない
 本人も、実は恥ずかしいと思っているので、それを逆なでするようなことはしてはいけません。兄姉としてのプライドを守ってあげてください。「あんたさえ、もうちょっといい子だったら」という発言は百害あって一利なし。本人の気持ちにも波があって、昨日はイライラしていたけど、今日は大丈夫(頑張っている)ということがよくあります。そのときに「昨日はグズグズだったのにね~」などとからかうのも厳禁。頑張りを踏みにじってしまいます。

2、甘えたい気持ちに応えてあげる
 赤ちゃん時代を再現して、安心させてあげると落ち着きます。それには「赤ちゃんごっこ」のように遊びに取り入れるのが有効。たとえば哺乳瓶を使いたがったら、ジュースを入れてあげるなどして、上の子の気持ちを想像して受け入れてあげましょう。赤ちゃんが寝ている間を利用するなどして、お母さんが上の子と一緒にお風呂に入るのも有効です。上の子との入浴をお父さんの係と決めてしまわず、チャンスをつくりましょう。小児科医は、赤ちゃんの沐浴は上の子が就寝後の夜中になってもかまわないと言っています。

3、お母さん自身がストレスをためない
 お母さんが不安定で、機嫌が悪いときに上の子に爆発してしまうと、上の子はとても傷つきます。それでなくても赤ちゃんのお世話で大変。そのうえ、上記の1や2も、となると負担感が増しますね。
 そんなときは周りの人にどんどん言って助けてもらいましょう。赤ちゃんを抱っこしているときに上の子も抱っこをせがんできたら、赤ちゃんのほうをお父さんや祖父母に任せて、上の子を抱っこしてあげます。ママ友にも「上の子が赤ちゃん返りでしんどいの」と話してしまいましょう。ただし、上の子が近くにいないときにしてくださいね。同様に幼稚園の担任にも、赤ちゃん返りの気配を感じ始めたらすぐ、話しておきましょう。子どもへの対応に配慮してもらえます。

 そして、たまには赤ちゃんを誰かに任せて、上の子と外でデートしましょう。上の子はもとより、お母さん自身も外出が期待以上のストレス解消になることがあります。

★周りの大人にできること

 上の子も下の子も子育てすべてがお母さんの肩にかかっているという状況は、相当な重圧です。お父さんの「専業主婦なんだから当たり前」、同居の祖父母の「母親なら当たり前」という発言は、お母さんをますます追い詰めます。

 周りの大人にできることは、お母さんにリフレッシュタイムをプレゼントしてあげることと、上の子への声掛けです。上の子には「○○ちゃんもそうだったよ」と、自分も同じように大切に守られてきたことを思い出させるような声掛けをすることに価値があります。

 臨床心理士の先生がたによると、ラッキーにも上の子に赤ちゃん返りの兆候がない場合も、「いつか出るかも」と考えておくことに意味があるそうです。そして、いざ出現したら「あー、やっぱり出た出た」と声に出してみて、と。それが心のゆとりにつながるということでした。赤ちゃん返りには、“卒業”という楽しみもあります。

(文:西東桂子/絵:山本花子)


3学期の幼稚園

《2014年2月1日》

 今年度も残りわずか。年少さんはようやく幼稚園児らしくなり、年中さんは幼稚園ライフを十二分に謳歌し、年長さんには最上学年としての自覚と誇りがあります。年少さんと年長さんを比べると、体つきもすっかり変わってきています。

 とはいえ、み~んなまだ「幼児」。小さなトラブルは毎日あり、それらをはじめとするさまざまな出来事や先生からの指導をとおして、「学び」や「気づき」も毎日積み重ねているところです。そう考えると、幼稚園児ってなんてけなげなのかと感動してしまいます。

 今回は3学期の様子を紹介していきましょう。

★「もう4歳だよ」と威張る年少さん

140201 年少組の教室。大型積み木をいくつか重ね、その上に立ち、先生が宙に掲げたタンバリンを叩きながら飛び降りるという遊びで盛り上がっています。立ち寄った私が「あら、みんなジャンプが上手ねぇ。飛びながらタンバリンに触るなんていうこともできるようになったのねぇ」と感心すると、Aくんが威張って言いました。「だって僕、もう4歳だもん」。隣にいたB子ちゃんが「あたしも4歳」と負けずに言い返すと、「僕は4歳2か月だよ。B子ちゃんは4歳何か月?」。「え~、わかんな~い」。Aくんは鼻息も荒く「僕、4歳2か月!」と繰り返しました。

 別の片隅では、女の子3人が「おうちごっこ」をしています。聞いてみると、3人はそれぞれ、お母さん、お姉ちゃん、猫の役なのだとか。お姉ちゃん役が「では学校行ってきま~す」と言うと、お母さん役が「100点取ってきてね~」と送り出しました。

 4歳何か月という言い方や、(テストで)100点を取るという表現は、おうちで兄姉やママが言っているのを聞いて耳から覚えたものでしょうね。言葉の意味はたぶんまだ理解していないと思いますが、子どもはなんでもよく聞いているということです。

 あちらのほうでは、おもちゃの取り合いが始まったようです。にぎやかな年少組ですが、入園後ほぼ1年たって、どの子も自分(地)を出せてきているのがよくわかります。それが集団生活のまずは基本ラインです。

★客観的に見ることを学ぶ年中さん

 年明けの年中組ではお正月遊びが人気でした。コマ回し、はねつき、かるた取りなどなど。コマ回しやはねつきは、最近は家庭ではなかなか経験できないのかもしれません。今日は一人ひとりが新しいコマをもらい、好きなように着色しました。描き終わった子どもから順に早速回してみて、色が交じり合うところを楽しみました。選んだ色や塗り方の違いでまったく異なるコマが出現するから、あら不思議。

 このコマは紐は使うものの、軸のところに巻きつけて回す簡便なタイプですが、紐の引き方にちょっとしたコツがあって、Cくんはなかなかうまく回せません。それを見ていたDくんが「Cくんがうまくできないのは、まだ5歳になっていないからじゃない?」と言ったものだから、Cくんは半分涙目です。だって本当はもう5歳なのですもの。だけどCくんにもまるで悪気はなく、むしろかばったつもりなのだからややこしい(笑)。

 こういうときには何も言わないほうが良いと思い、ほかの子が別の遊びに移っても、私はそれからしばらくの間、Cくんのコマ回しにとことん付き合い、彼はとうとうやり方をマスターしました。悔しさが“粘り”を生む好例です。

 隣のクラスでは発表会の準備を進めていました。最初の「礼」のところで全員が揃いません。そこで先生は全員を集めて座らせ、お話を始めました。

 先生「みんなは舞台にいるけど、前にはどなたがいるの?」
「お客さま」「ママやパパ」
 先生「そうね。お客さまからはみんなのことがよく見えるのよ。先生、絵を描いてきたから、ちょっと見てみて。これは今のみんなの『礼』をお客さまから見たところです。何か気がついたことがありますか?」

「あー、はじっこの子がよそ見してるー」
「少ししかおじぎしてない子がいるー」
「足を開いてる子もいるよ」

 先生「いろいろ気がつきましたね。みんなの『礼』がきちんと揃うと、お客さまは『○○組はカッコイイ』と思ってくださるはずよ」
「はーい」

 百聞は一見にしかず。自分たちが相手からどう見えるのか、客観的に理解できた一瞬でした。それに、この時期の子どもたちには“カッコイイ”はとても効き目のある魔法の言葉です。

★年長さんだって泣くし、皮肉を言ったり納得したり

 発表会後の年長組。今日はみんなで「なんでもバスケット」で遊んでいます。「なんでもバスケット」は、鬼になった子が指示する条件に当てはまる子だけが席を移動する椅子取りゲームです。そのうちにE子ちゃんが泣き出しました。実はE子ちゃんは涙腺がゆるく、よく涙をこぼします。でももうすぐ1年生ですから、自分で気持ちを切り替えられるよう先生は見守ることも多くなってきています。周りの子は「またか」という感じでおしゃべりを始め、「なんでもバスケット」は中断しました。

 先生はしばらく全体の様子を見ていましたが、E子ちゃんが泣きやまないので近くまで行って「どうしたの?」と声をかけました。なかなか話せないE子ちゃんでしたが、ようやく「Fくんが嫌なことを言った」と答えました。どんな嫌なことなのかを話すまでにさらに時間がかかりました。どうやら何人か前の鬼のとき、鬼になった子がなかなか条件を思いつけなくて立ち往生していたのをE子ちゃんが指をさして笑い、それを見ていたFくんが「自分だって指さされたら泣くくせに」と皮肉ったらしいのです。

 E子ちゃんがなかなか話せなかったのは、自分にも非があると認識していたからかもしれませんね。

 先生は「嫌なことを言われたら、そのときすぐに『そういうこと言わないで』と言わないといけないね。年長さんなのだから、頑張って言えるようになろう。時間がたってしまったら、相手も周りの人も理由がわからないでしょう? それに自分も悪かったと思ったら、謝ればいいんだよ」と言ってきかせました。

 それからおもむろに周りを見回して一喝。「みんな、今はおしゃべりしているときかしら。周りに困っている人がいたら、みんなで一緒に考えてあげてほしいです。自分には関係ないという態度は、先生悲しいな。この前の発表会ではみんなで力を合わせたでしょ。それと同じことなのよ」。

 たまたま私の隣にいた男の子が「そうか、同じことなんだ…」と、ぼそっとつぶやくのが聞こえました。それからちょこっと“学級会”を開き、再び「なんでもバスケット」が再開されました。

 小さなトラブルを経験することは、大きなトラブルを回避する力をつけるということでもあります。子どもたちの貴重な経験を大らかに見守ってあげてください。

(文:西東桂子/絵:山本花子)


その一言がママを幸せにする

《2014年1月1日》

 新年あけましておめでとうございます。今年も「幼稚園ママ&パパ」を通してよろしくお付き合いください。

 子育て中のママたちにアンケートをとると、外出時にいちばんヘコむのは「泣く(あるいは騒ぐ)子どもをなんとかしろという周囲からの刺すような視線」だといいます。でも、子どもは泣くのが仕事だし、静かにしなさいと言って、すぐ言うことを聞いてくれるようなら苦労はしませんね。

 あくまで私の印象ですが、厳しい視線を投げつけるのは、意外にも若い人よりも60代のジジババ世代が圧倒的に多いように思います。数十年前には必死で子育てをしたはずなのに、さらには自分にも孫がいるだろうにと、私はいつも不思議に思っています。団塊の世代って、いつまでたっても自分本位なのかなぁ。というのはもちろん冗談で、実は10年前にも当時の60代の視線が厳しいと感じたことがあります。セカンドライフのスタート地点にいる60代は、自分の老後のことで頭がいっぱいなのでしょうか。

 それはさておき、年の初めですから、心が温かくなるお話に方向転換しましょう。子育てに追われる時期だからこそ、ふと掛けられた温かい言葉はママたちにとって忘れられない一言になります。まずは新聞の投書欄から拾った話題。

★「今日は特別」の一言で楽しい思い出に

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 鹿児島のAさんは、大学のホームカミングデー(同窓会のようなもの)に子ども4人を連れて出掛けました。小学校3年生を筆頭に、幼稚園年長・年少、1歳半の3男1女です。学内を歩き回っていると、教授らしき男性に声を掛けられました。「今日はお子さんたちにおいしいものをいっぱい食べさせてあげてくださいね。好きなものも買ってあげて『○○大学に行って楽しかった』という思い出を作ってあげてください」。

 Aさんは「静かにさせなさい」と言われるかと思っていたので、その言葉でほっと肩の力が抜けたそうです。思わず「今日はなんでも好きなものを買ってあげる」と子どもたちに一言。普段はおやつを分け合って食べる4人ですが、その日はお店で一人ずつ好きなおやつを買ってもらい、満面の笑みを浮かべたとか。その笑顔を見て、いつもは子育てに気を張っているAさんの心にもゆとりが生まれました。

 よほど楽しかったのか、帰宅して小3の長男が「ぼく、将来、○○大学に行きたいな」と言うと、「ぼくも」「私も」と(意味はわかっていないかもしれませんが)きょうだいが声を揃え、家族みんながもう一度笑顔に。教授の一言がたくさんの笑顔を運んできてくれて、本当に忘れられない思い出になったそうです。

★小言より届く言葉

 次は、知り合いのママから聞いた話です。

 東京に住むそのBさんは幼稚園年中組のCくんを連れて、電車に乗っていました。Cくんはかなりのやんちゃ坊主。10歳上のお姉ちゃんがまったく手のかからない子だったため、Bさんは、どうしてこの子の場合はこうも叱り続ける毎日なのかと嘆く日々。その日も、電車に乗り込むときには「横入りはダメ。順番よっ」と叫び、車内に乗り込めば乗客をぐいぐい押すので「すみません」と謝り、次の駅で空いた席めがけて飛び込むように座った際に、右隣の女性を蹴飛ばしたのに謝り、窓の外を見ようと勢いよく反転した際に、左隣の老紳士を蹴飛ばしたのに謝りと、ずーっと謝罪と小言を言い続けていたといいます。

 極めつけは電車を降りるとき。Bさんが「さぁ、降りるわよ」と言った瞬間、Cくんは靴を履いたまま座席に立ち上がり、遠くの床までジャンプしました。頭に血が上ったBさんが「何やってるのっ」と叫ぼうとしたとき、それより一瞬早く静かな声が掛かりました。「ああ、怪我しないで降りたね。よかった」。左隣の老紳士の一言でした。

 言われつけない(?)優しい言葉に、Cくんも棒立ち。我に返ったBさんは老紳士に深くお辞儀をしつつCくんの手を引いて電車を降りました。Bさんは私にしみじみ語ってくれました。「叱らなくても、子どもに届く言い方があるんですね。いえいえ、そうじゃなくて、叱っても届かないけど、優しい言い方だからこそ届くというか…」。

 Bさんはそれ以後、Cくんへの言葉掛けを変えたそうです。それまでいつもいつも叱られていたCくんですが、最近少し落ち着いてきたような気がするとのこと。老紳士の一言が親子にちょっぴり変化をもたらしたようです。

★親子で褒められて

 最後は私の体験から。
 かなり古い話で恐縮ながら、年長組だった息子と電車に乗っていたときのことです。その日は雨が降っており、親子それぞれ傘を持って、開閉しない側のドア近くに立っていました。終点で降りる前、こんな会話を交わしました。「駅は降りる人で混雑しているから、傘は縦に持つんだよ。横に持つと前や後ろの人に当たって危ないからね」「うん、わかった」。

 電車を降りて10メートルも歩いたでしょうか。横から声が掛かりました。「ぼく、お母さんの言うこと、ちゃんと守れてえらいね~」。先ほど、私たちが立っていたところの脇に座っていたおばあちゃんです。会話が聞こえていたのでしょうね。誇らしそうに笑みを浮かべて私を見上げる息子。私が思わずお礼を言おうとしたら、「お母さんも、いいこと教えて偉いわね~」ともう一言。息子と顔を見合わせたあと、3人で「あははは」と笑い合いました。雨の日の憂鬱が一瞬で吹き飛びました。70代に見えたおばあちゃんから、子育てを頑張ろうと思える元気をもらったのでした。

 時には周囲から厳しい視線が降り注ぐことがあるかもしれないけれど、こんなふうに元気や喜びや気づきをもらったことがある人も、少なくないことでしょう。そんな体験のある人は、今年はお返しをする年にしませんか。わが子より小さい子を連れているママ、自分より若いママに一言声を掛けて、ぜひ元気をプレゼントしてあげてください。

 日本中のあちこちで笑顔がこぼれる2014年になりますように。

(文:西東桂子/絵:山本花子)

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子どもの発達を知る ~2学期末の職員会議から~

《2013年12月1日》

 どこの幼稚園にも「保育目標」があります。卒園までの間に子どもをこういうところまで導いていこう、こういうふうに人としての土台を築いてあげたい、という目標です。卒園までにこれらを実現するために、年少の1年間ではここまで、年中の1年間では、年長の1年間では、という年次別の保育目標があり、さらには学期ごとの保育目標もあります。担任の先生はそれらを一応の目安として子どもたちに向き合っていきますが、子どもたちの発達は一人ひとり異なるので、個別対応も必要です。

 今回は、保育目標に対して子どもたちの実際はどうか、というテーマで開かれた、ある幼稚園の職員会議の様子をご紹介しましょう。ある年の2学期末(年末)の会議です。各担任の報告や相談に対して、同僚や先輩、主任、副園長、園長などが助言をする場でもあります。

 子どもの発達に詳しいプロたちの会議内容を知ること
は、子育て中のママにも役に立つと思います。そして、子どもの発達には個人差があることを理解して、よその子と比べて一喜一憂しても意味がないのだということも知ってください。

★年少児の発達

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担任A「A子ちゃんは朝、まだママと別れがたい状況だが、先週、ママにその理由を『バイバイするとママがいなくなってしまうような気がする』と話したそう。ママはいなくならないということはもちろん、幼稚園では先生が守ってあげるから安心してと伝えていこうと思う」

担任B「Bくんはまだ一人遊びが楽しい段階。周りへの関心が薄いので、担任が全体に話をしているときにも聞いていないことが多い。Cくんは2学期になってだいぶ話が聞けるようになってきた。周りに関心が出てきたことで、お友達の気を引こうとふざけすぎることがある。そんなときは、きちんと話を聞いているお友達を褒めると自分も頑張ろうとするので、上手に活用したいと思っている」

先輩教諭「年少児には『先生の話を聞きましょう』と言い聞かせても無理。それよりも今は、楽しく話が聞けるような雰囲気づくりが担任の仕事」

担任C「D子ちゃんは突然環境が変わることに弱いと、ママから話があった。家庭では常に、先々のことを示してきたそう。そこで、以前よりは具体的に『明日はこんなことをするよ』と伝えるようにした」

園長「そういうときに『明日は教室が変わるけど大丈夫よ』という言い方ではなく、『楽しみね』という言い方を選びたい」

担任D「Eくんは1学期はお友達に関心がなく、一斉活動でも一歩引いていた印象があったが、最近はお友達とかかわるきっかけを作ってあげると、会話が弾むようになってきた。ただ、身支度や準備、片付けにはまだかなり時間がかかる」

園長「先生が手順を示してあげて。そして、できたら褒める。『お友達が待ってるよ』は本人には関係ないこと」

担任E「F子ちゃんは自分のやりたい遊びを見つけられなくて担任のあとを付いて回る。走るのが好きなので氷鬼に誘い、途中で『先生と二人じゃ寂しいね』と言ってみたら、お友達を誘えるようになった」

担任F「昼食を一番に食べ終えた子を、毎日チャンピオンとして発表してきたが、早いのが偉いという雰囲気になってきていけないと思っている。きれいに食べることの大切さも伝えていきたい」

副園長「生活の中にはいろいろなチャンピオンがいることを示してあげるとよい。昼食のときで言えば、よい姿勢で食べている子もチャンピオンになれる」

★年中児の発達

担任A「子どもたちが『こうなっちゃった』と状況だけを言ってきて、担任が指示するという段階を経て、今は自分で決める、自分たちで決めるを大事にしている。担任が考えるきっかけづくりをしてあげると、考えて決定できるようになってきた」

担任B「私も子ども同士のトラブルが起きたとき、どちらの言い分もよく聞いて、子ども二人と担任の3人で考えるという状況づくりを大切にしている。担任はどちらが悪いかわかっている場合でも、あえて言わない。子どもの表情を汲みとって、そのときどきに最適だと思われる言葉がけをするよう心がけ、自分たちで決着がつけられるよう導きたい」

園長「先生とかかわりができ、先生にきっかけをつくってもらい、先生ができたことを褒めてくれると、自分に関心をもってくれたと嬉しくなる。これは年中児に限らない。全担任がいつも心に留めるように」

担任C「双子の兄のAくんは、積極的でなんでもできる妹のB子ちゃんに対して劣等感を持ち始めた。そこでママにも『何か自信の持てることを見つけてあげたい』と話した。今は縄跳びの連続跳びに挑戦中で、30回連続をクリアして自信がついてきた」

担任D「お友達のいいところ探しをした。一人ひとりのいいところを挙手で発言、人数分の紙を用意して書き込んで壁に貼った。予想以上にお友達をよく見ていて嬉しくなった。そのあと『お友達のいいところを真似っこすると、いいところが広がっていくね』と伝えた」

★年長児の発達

担任A「年長になって連帯感を楽しむようになったが、運動会の練習のとき、勝つことがすべてという雰囲気になってきたので、『勝っても負けても頑張ったことを認め合い、讃え合えるようにしたいね』と声をかけた」

担任B「AくんがBくんにあげた手紙をCくんが破った。担任はセロテープで貼り合わせながら、『手紙はこうやって直せるけど、気持ちは直せないのよね』とつぶやいた。手紙は気持ちを言葉に表して渡すもの。手紙には気持ちがこもっていると伝えると、Cくんは謝ることができた」

担任C「作品展に出すための立派な共同画を仕上げることができた。多少困難なことでも、途中で投げ出さないくらいの力がついてきた」

園長「子どもは知っていることを絵に描く。だから、観察の時間には知っていることを増やしてあげることが大事。こんな形だね、こんな色だね、こんな手触りだね、と声をかけて、自分で感じられるよう手助けを」

担任D「できることのもう一歩上のレベルに引き上げてあげる保育の大切さを痛感している。これが年長の保育の極意だと思う」

 いかがでしたか? 親と子の日常はずーっと線でつながっていますから、わが子が今、どういう発達段階にあるのかと考えることは普段はあまりないことだと思います。だからこそ幼稚園教育に意義があるのですが、保護者会や個人面談のときに先生が話してくれる内容には子育てのヒントがいっぱい。今、わが子にどんな言葉がけが必要で価値があるのかが詰まっていたりします。お聞き逃しのないように。

(文:西東桂子/絵:山本花子)


小学校の先生が望んでいること

《2013年11月1日》

 先日、月刊誌「あんふぁん」の企画で、小学校の先生がたに集まっていただき、最近の新入学児(1年生)にどんなことを感じているかを語っていただく機会がありました。言い換えればそれは、「幼稚園時代にお母さんがこんなふうにしているんじゃありませんか?」という警告であり、また、「そんなふうにしないでほしいのですが」という要望でもありました。

 その多くは、このコラムでもたびたび取り上げてきた内容と同じで、私としては「ほら、やっぱりそうでしょう?」という気持ちになりましたが、皆さんにとっては小学校の先生がたの直接の発言ということで、より価値が高いことでしょう。「あんふぁん」誌面に載せきれなかった話題も含めて、小学校現場の声をご紹介します。

★幼稚園時代にめいっぱい遊んでほしい

Photo 遊びに没頭し、体を動かして汗をかいて遊ぶ楽しさや、みんなで一緒に何かを作り出したり成し遂げたりする楽しさをもっと体験してきてほしい、と先生がた。その体験不足からか、「暑くて校庭に出ると汗かくから」と外に出たがらない子、「汚れるからイヤ」と砂遊びを敬遠する子、友だちの遅さ(遊ぶ準備の遅れや共同作業の遅れなど)に対して厳しい子、待てない子が目につくそうです。

 汗をかいても汚れても、洗濯すれば問題ないとお母さんはドーンと構えてほしい、そもそも子ども時代は汚れてもいい服装をさせてほしい、という発言がありました。

 また、「早い遅いは個性のうち」と私も何度か書いてきましたが、先生がたからも「低学年では、早いことを求めません。むしろ、いろいろな友だちの個性を認められることのほうが大事。早いことがいいことだという考え方は社会の影響を受けているのは間違いないと思いますが、教師も親もそうした風潮に流されないようにしたいですね」という発言がありました。親がわが子の行動を待ってやれないと、子どもも友だちの行動を待ってやれないという負の連鎖が起こるのでしょうか。

 また、算数の授業でおはじきやブロックを使うとき、授業そっちのけで遊んでしまう子が多いのは、入学までの遊びの量が足りていないせいではないかという指摘もありました。

★言葉によるコミュニケーション力を磨いてほしい

 黙って座り込んでいるのでどうしたのかと先生が尋ねると、ようやく「忘れ物をした」と小さくつぶやく、体操袋をぬっと差し出すので何事かと思うと、よくよく見ればひもが抜けていて、なんとかしてくれということらしい…。

 こんなふうに、自分の置かれた状況を説明できない子、やってほしいことを言葉で言えない子が増えているのも近年の傾向だとか。

 先生がたは「お母さんがあれこれ先回りして対応してしまい、子どもが言葉で意思表示をする機会が少なくなっているのではないか」と心配しています。以前にも書きましたが、大人になって社会に出たとき、周りの人が気を使っていろいろ察してくれる、なんていうことばかりではありません。もっと近い将来では、小学校高学年や中学生になったとき、万一いじめにでも遭ったら、友だちに「やめて」、教師や親に「助けて」と言えない子どもであったら心配でなりません。

 いじめの例は極端ですが、先生がたは親の先回りを身近な例で説明してくれました。
「翌日に持っていくものの準備を親がやっている家庭があります。低学年であっても、まずは子どもが自分でやって、それを親子でチェックするなど、やり方を工夫してほしい。親任せの子は、宿題を忘れても『ママが入れ忘れた』と言い訳します。困るのは自分、だから準備も自分でする、と考えてほしい。親が手伝うのは悪いことではありません。少しでも自分でやった部分があれば、子どもは全部自分でやったというくらいの気持ちになり、自分に自信がもてるようになります」

 自分が思っていることを説明でき、やってほしいこと・やめてほしいこと・手伝ってほしいことをきちんと自分の口から言えるようになるよう、今から言葉でのコミュニケーションに親子で磨きをかけておきましょう。子どもが何か言う前に行動してしまうお母さんは、子どもの一言を待ちたいものですね。

★小学校への“わくわく感”を大事にしてほしい

 上記で「助けて」と言えるコミュニケーション能力の大切さに触れましたが、先生がたは「助けて」には「信頼感」がセットになっていると言います。信頼できる相手だから、助けてほしいと言えるのですね。幼児期には第一に「親への信頼感」が芽生えるような親子関係を築いてほしい、そこで大人への信頼感を獲得できたら、教師への信頼感も生まれてくるのだから、と先生がた。

 そう考えれば、「○○ができないと小学校に上がれないよ」「そんなこともできないと小学校の先生に怒られるよ」という言い方は、ぜひとも避けたいところです。小学校や小学校の先生を恐ろしいものと思ってしまったら、学校や勉強へのわくわく感は消えてしまいますから。

 多くの方が気にする「ひらがなの読み書き習熟度」についても、「覚えておかないと大変」と、入学前までに子どもに教え込もうとすると、それは学ぶ楽しみではなくなってしまうと先生がたは心配しています。「ひらがなを勉強することを嫌いにさせないで」と。

 原則論では、入学時点でひらがなを書くのはもちろん、読むのもまだでも問題はないけれど、靴箱にはひらがなで氏名が書いてあるので、自分の名前は読めるのが望ましいという話が出ました。ひらがな全部を読めなくていいから、自分の名前が読めた喜びや、町を歩きながら看板を見て、「あ、うどんって書いてあるよ。うどん屋さんだ」というふうに、文字と現実の世界がつながった楽しさを感じることを大切にしてほしいということでした。

 小学校の先生がたから、入学までの期間にお母さんにしてほしいこと・してほしくないことが挙がりましたが、いずれも幼稚園教育で目指していること・実践していることと同じです。つまり、幼稚園の先生がたの話によく耳を傾けていれば大丈夫。子どもへの手出し口出しが多すぎないことが肝心だということだと私は理解しました。子どもの言葉と行動を待ってあげられる親になりましょう。

(文:西東桂子/絵:山本花子)