幼稚園・行事・イベント

わが子か、教え子か―入学式担任欠席報道から考えたこと

《2014年6月1日》

 今は6月ですから、4月8日の出来事はすでに旧聞でしょうか。
 この日、埼玉県の県立高校で入学式があり、4つの高校で新入生の担任教諭各1名が有給休暇を取って入学式を欠席しました。理由は、わが子の入学式に出席するから。入学式に出た埼玉県議がFacebookに投稿したのがきっかけで、地元紙が報道。投稿の内容は、「(前略)新入学生の思いも考えず私事の都合で簡単に職場を放棄する態度には憤りを感じざるを得ませんでした。本当に怒り心頭です。教員の責任感や倫理観、モラルとはどうなっているのでしょうか?(中略)教員は、教育という一番大事な事柄を担っているということを自覚してもらいたいです」というものでした。

 その後、ネットのニュースサイトやテレビ、大手全国紙にも取り上げられ、特集を組んだ週刊誌もあって大きな話題になりました。それにより、入学式当日、教育委員会に複数の保護者から苦情が寄せられていたことも判明しました。
 皆さんも報道を目にしたと思いますが、どう思われたでしょうか?

★入園式に担任がいなかったら

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 私がまず思ったのは、「幼稚園の入園式に担任教諭が欠席するなんて、聞いたことがないなぁ」ということでした。

 幼稚園は学校教育法に書かれている「学校」の最初に登場する教育機関ですから、入園式は学校教育のスタートの記念すべき行事です。そこに担任がいないなんて、ちょっと考えられない事態。もっとも、私立幼稚園の先生は全体的に若いので、わが子が入学式を迎える年齢の先生が少ないという事情もあるとは思いますが。

 幼稚園では、入園式での新入園児の不安を少しでも軽減しようと、事例は少ないですが、入園式前に担任が家庭訪問をして“面通し”をしておく方法をとっている園もあります。そんなことまで考えるのですから、入園式に個人の理由で欠席することはまずないだろうと想像できます。

 私が次に思ったのは、「その欠席した教諭は、わが子の入学式に出席して、もしわが子の担任が欠席していたらどう思うのだろうか?」ということです。「担任がいないなんて!」と思うのか、「自分も欠席したのだから事情はわかる」と思うのか、こればっかりはご本人に聞いてみないとわからないことですね。

 欠席批判派の先頭に立った形の“尾木ママ”こと教育評論家で法政大学教授の尾木直樹さんは、入学式には教師がすべき大切な役割がある、と主張しています。欠席擁護派にはワーク・ライフ・バランスを研究する人たちが多かったようです。主張を要約すると、「有給休暇を取るのに理由はいらない」。

 インターネットによる意識調査では、一般市民の意見はほぼ半々でした。なかには「校長の許可が出ているのだから担任本人を責めるべきではない」「自分の子どもが一番大事なのは当たり前。そう考えないような教師にわが子を任せたくない」というコメントもありました。

 そうこうするうち5月5日には、プロ野球巨人の原監督が父親の緊急入院に伴い、ヘッドコーチに代役を頼んで試合から離脱したという報道もありました。

 朝日新聞によると、プロ野球には、シーズン中に監督や選手が家族の危篤や死去などを理由に休める制度はないそうですが、各球団の判断に任されており、これまで離脱を球団から反対された例はないとのこと。一方、大リーグには選手の家族の危篤や死去に際して「忌引休暇」があり、選手が申請すれば取得できるそうです。この制度は監督やコーチには適用されませんが、実際は「野球より家族優先」の考え方が根付いているとか。

 制度の有無は別にして、日本のプロ野球でも大リーグでも、自分の判断で離脱せず、現場にとどまった選手や監督もいます。

★仕事も大事、個人も大事

 この問題、とっても難しいですね。職業が教師や野球選手でなくても、あるいは家族の介護をしている人などでも、子どもの入学式に出席できない人はたくさんいます。

 自分のことで言えば、子どもの入園式・入学式にはすべて出席することができました。でも、講演を頼まれていた日の前夜、子ども(当時2歳)が高熱を出し、夜中に親友に電話をして翌朝7時に家に来てもらい、後ろ髪を引かれながらも出かけた経験もあります。夫は出張中でした。また義父の葬儀の際は書籍編集の締切のときで、お坊さんが到着するまで片隅で仕事を続け、なんの手伝いもしなくて親戚じゅうから白い眼で見られたこともあります。どちらも「仕事上の自分の代わりがいなかったから」です。

 代わりがいるか、いないかを判断するのは、その人本人にしかできないことだと思います。入学式を欠席した高校教諭は、「式には自分がいなくても大丈夫、その後の高校生活でフォローできる」と考えたのでしょうし、原監督も「試合には自分がいなくても大丈夫、ヘッドコーチや選手に任せられる」と考えたのでしょう。実際、その試合では巨人が勝っています。

 ただ、たまたま私が昨日取材した人がこんなことを語ってくれました。その人は幼稚園か保育園の先生になりたくて短大の保育科に通っていましたが、保育実習で通った園の園長先生に実習最終日にこう言われたそうです。「あなたの子どもへの接し方は安心して見ていられる。だけど保育者は子どもと遊んでいればよいわけではない。人生の最初の段階で、人間としての基礎・基盤を作ってあげる仕事だということを忘れないで現場に戻ってきてほしい」。

 その人にはずっしりこたえた言葉だったそうです。自分はそこまで考えていなかった、そこまで腹が据わっていなかった、こんな中途半端な考えで保育者になってはいけない、と思い、方向転換。卒業後、別の学校に入りなおして、今は別の職業で大成していらっしゃいます。

 自分の職業に対して腹が据わっているか。これも一つの判断材料かなと私が思ったのは確かです。この女性に取材したことが、このテーマを書く動機となりました。私なんぞ、保育者向けの講演では「担任が休むと子どもたちがどんな気持ちになるか想像してみてね。風邪で休んだりしないよう体調管理も教師の仕事ですよ」なんて大声で言っていますから、ちょっぴり偏っているかも…。

 しかし、個を犠牲にして仕事をせよなどと言うつもりもありません。高校入学式の件では、このような状況が見込まれる教諭を事前に新入生の担任から外しておくような人事はできなかったのか、とも思います。結論は出しにくい問題ですが、個人攻撃ではなく全体で考えていく事柄に“昇格”するとよいなと思います。

(文:西東桂子/絵:山本花子)


5~6月の幼稚園

《2013年6月1日》

 お子さんは元気に幼稚園に通っていますか? ママに心配ごとはありませんか? 親子で楽しく通園できているといいですね。

 今回は新年度がスタートして1~2か月後の幼稚園の様子をご紹介しましょう。うちの子はきっとこういう感じだろうなと想像しながらお読みください。

★「僕たち、私たちの出番はないかな」…年長さん

130601  4月の始業式の日、Aくんが話してくれました。「ぼくねー、年長さんになるのがすっごく楽しみだったんだー」。彼は一人っ子。幼稚園で一番大きいお兄さんになるのを心待ちにしていたのでしょうね。言葉には出さなくとも、年長さんのほとんどがそんな気持ちを持って新年度を迎えます。

 先生からも「年少さんはまだ幼稚園に慣れていないし、わからないこともたくさんあるから、お兄さんお姉さんが優しく教えてあげてね」と言われていて、自分の出番はないかと手ぐすねひいている感じ。砂場でスコップの取り合いをしている年少さんを見つけて、もう一つ持ってきてあげる子、砂場に飽きてどこかに行ってしまった年少さんたちがほっぽりだしたままのおもちゃを、黙々と片付けてあげる子もいます。

 あ、あそこではブランコの順番を譲ってあげた子もいました。ブランコに乗っている子もなんだかいつもより短い時間で交代してあげたようです。

 走り回っている年少さんがつまずいて転び、泣きだしました。近くにいた年長の女の子3人がすばやく駆け寄り、2人は助け起こして「大丈夫?」と頭をなでています。もう1人は先生のところに走りました。「先生、小さい子が転んで泣いてます」。素晴らしい連携プレーですね。さすが年長さんです。

 年長になると、なわとび、鉄棒、フラフープで遊ぶシーンも増えてきて、得意な子、苦手な子も出てきます。得意な子はもちろんのこと、ただいま練習中で日々上手になっていく子もみな揃って「見て見てキッズ」になりますから、先生たちは必ず見てあげて、「おお、○○ちゃん、なわとびの天才だー」「鉄棒の選手になれそうだね」「△△ちゃん、昨日よりずっと上手になったねー」「毎日練習しているから、そのうち先生を追い越しちゃうね」と、その子が期待していそうな言葉をかけて、やる気を引き出します。

 なかには上手にできない自分を認めたくなくて、お友達の前では練習しない子も出始めますが、先生はその子の性格を考慮しながら「先生とあっちのほうで練習しようか」と声をかけたり、「□□公園にも鉄棒があったね」とささやいたりします。公園で練習に付き合ってと言われたママは面倒がらずに一緒に行ってあげてくださいね。陰で努力する姿は美しいものです。「見て見て~」のリクエストにも応えてあげてください。

★「う、うそっ、本気の戦い?」…年中さん

 年中さんは年長さんほど各分野の苦手意識も少なく、上手にできる子、まだできない子も交じり合って仲良く遊んでいます。

 鉄棒で楽々と前回りをする子の横で、Bくんは跳び上がれないでいます。何度も挑戦したあとに、きっぱりと言いました。「僕さ、腕の力がまだついてないんだと思うんだよ。だから腕の力をつけるのが先だね」。そして、おもむろにひじの屈伸運動を始めました。うん、エライ。自分で考えたんだね。こちらも思わず笑みが浮かんでしまいます。

 去年は、幼稚園に時々やってくる私のことを「誰だ、この人」という感じでちょっと距離を置いて見ていたC子ちゃんは、年中になった途端に「サイトー先生、一緒におうちごっこしようよ」と誘ってくれました。幼稚園での自分が確立できて、周りに目を向ける余裕が生まれてきたのかもしれません。いつもは男の子と遊びたがるC子ちゃんですが、この日は「私がお母さんだから、サイトー先生はおばあちゃんね」と念を押されました。お母さん役を希望するなんて、すこーし性別を意識しだしたのかな。

 子どもたちが性別を意識し始めて男女に分かれて動くことが増えてくるのは、個々人の差はありますが、全体的には年中の中盤以降のことです。

 男の子数人が新聞紙を丸めた剣でちゃんばらごっこをしているところへ、突然、年少の男の子が“乱入”してきました。剣がないので、武器は素手。お兄さんたちにつかみかかり、中には引っ掻かれた子もいるようです。「えー、うそっ、本気の戦いかよ」。年中同士なら引っ掻かれたらケンカになるところですが、相手はわけのわからない小さな子。殴りたくなるのを必死でこらえて手がぷるぷるしていましたよ。みんな、よく我慢したね。

 ママが恋しくなって泣き始めた年少さんを慰めているのは、あら、Dくんではありませんか。「大丈夫だよ、ママはもうすぐ迎えに来てくれるよ」。1年前のDくんといえば、6月ころまで朝は毎日涙を見せていました。そうですか、1年たって慰める側に回りましたか。成長しましたね。

★「やりたいことをやるぞ」…年少さん

 年少さんはようやく幼稚園のリズムがつかみかけてきたところ。登園してきたら上履きに履き替え、カバンをロッカーにしまうんだと理解してきました。今は好きな遊びを楽しむ時期で、園庭で走り回ってもいいし、お部屋で粘土やお絵描き、積み木遊びやおままごとなどやりたい遊びに熱中してもよく、幼稚園は楽しいところという気持ちを育んでいきます。もう少しして「どうも○○ちゃんは外遊びよりお部屋遊びをすることが多いな」と先生が感じると、意識して園庭に誘います。幼児期は体全体を使って遊ぶことが重要だからです。

 以前にも書きましたが、今はまだ、みんなが一人遊びの時期。お友達と遊ぶのが楽しいと実感するのはもうちょっと先です。それでも少しずつお友達とかかわる経験を積み重ねていきますよ。

 E子ちゃんが粘土を小さく千切って「見て~、ウサギのえさだよ~」と私に教えてくれると、隣で粘土をいじっていたF子ちゃんは何かひらめいた様子。粘土をやや大きく千切って「見て~、こっちはヤギのえさ~」と反応しました。二人が「見て~」を連発するのに刺激されて、遠くでお絵描きをしていたGくんも「先生、僕の絵も見にきて~」と叫ぶので、私はあっちへウロウロ、こっちへウロウロ。きちんと対応してあげることで信頼関係が生まれます。

★発展途上の5~6月

 年少さんは3歳にして初めての集団生活を始めたところですから、落ち着いて座っていたり、先生の話を聞いていたりができないのは当たり前。ママは必要以上に心配しすぎず、子どもへの要求レベルを高く持ちすぎないことです。

 年中・年長さんにしても、今日ご紹介したのは、いわば理想形。お部屋の場所や担任の先生が変わって気持ちが安定せず、朝、泣いてしまう子もまだいますし、物の取り合いをすることもあれば、自制できずにお友達に手が出ることだって。でも、卒園までの2年、1年の間にぐんぐん成長していきます。

 どの学年のママにもお願いしたいことは、わが子をよく見ること。年度末になったときに「この1年でこんなふうに成長しました」と話せるように、お子さんの成長を見守ってあげてください。子どもの成長に気づくことができると、褒めてあげる機会も増えて、子育てが楽しくなりますよ。

 そしてもう一つ。「私がこういう言い方をしたら、私がこういう態度を取ったら、子どもはどう感じるかしら」という視点を大事にすれば、たいがいのことはうまく運ぶと思います。親も子も幼稚園時代をたっぷり楽しんでくださいね。

(文:西東桂子/絵:山本花子)


雨の日もまた楽し!

《2012年7月1日》

 一部の地域を除いて梅雨真っ只中。雨の日が続いていますね。外遊びができない子どもたち、雨の日には幼稚園でどんなふうに過ごしているのか気になりませんか? お部屋で勝手に遊んでいるんだろうなぁと想像しがちですよね。ある日の様子をご紹介しましょう。

★室内でも体を動かして遊ぶ

120701  年中組では全員に新聞紙(新聞4ページ分)が配られていました。広げた新聞の上に各自が立ち、先生とじゃんけんです。負けると新聞を半分の大きさに畳んで、またその上に立ちます。そしてまたじゃんけん。こうして足下の新聞は負けるたびに小さくなりますが、片足であっても揺れていても、新聞の上に立っていられれば、次のじゃんけんに参加できます。新聞の外に足をついてしまった時点でリタイアです。最後は4人になりましたが、みんなのカウントダウンで10秒立ち続けた3人が優勝しました。

 すると先生が言いました。「あら、新聞に大事な記事が載っているみたい。みんなお父さん座りをして新聞を読んでみて」。お部屋中にあぐらをかいたお父さんが出現しました。なかなか様になっていますね~。

先生「なになに、○○組では全員で入れる大きな温泉風呂を作る予定になっています、だって」
 「やったー、作ろう作ろう」。

 クラスのソフト積木全部を使ってお風呂作りが始まりました。露天風呂でしょうか。さっきまで読んでいた新聞をびりびり破ってお湯に見立てます。みんなで入って大はしゃぎ。余った新聞で温泉饅頭を作って食べている子もいますよ。

 「お風呂で泳ぎたい人もいるみたいですね。だけど一度に全員で泳ぐとぶつかっちゃうね、どうしようか?」
 「一人ずつ順番がいいんじゃない?」
 「それじゃ時間がかかりすぎだよー」
 「3~4人ずつがいいと思いま~す」
 「わかった、グループで順番がいいよ」

 意見がまとまったところで、先生がすかさず言いました。
 「早く並んだグループから入ることにしようかな。みんなもう年中さんだから、ささっと並べるよね?」

 知恵を絞らせたり、整列させたり、遊びの中にも成長のステップを盛り込むのが先生の腕の見せどころです。グループごとにス~イスイと泳いで遊び、順番待ちの子は積木の外側からお湯(新聞紙)をかけまくりました。

 たっぷり温泉遊びを堪能したころ、先生は色付きの大きなビニール袋を2枚取り出しました。
 「そろそろ温泉から帰りますよー。お湯を1滴残らずこの袋に入れてくださーい」
 みんなで競争しながらやると早い、早い。千切った新聞が散乱していたお部屋があっという間にきれいになりました。

 そのビニール袋は口を結えられマジックで顔が書かれて、一瞬にしてテルテル坊主に大変身。巨大テルテル坊主を二つ、みんなでテラスの柱にくくりつけました。「明日はお天気になるといいね」。

 それからお部屋の真ん中にゴザを敷いてピクニックお弁当の時間となりました。雨の日ならではの楽しいプログラムでした。

★先生ごとに遊びを工夫

 この新聞紙遊び、学年によって、また担任の先生によって様々なアレンジバージョンがあります。

 年少組を覗いてみると、やっぱり全員に新聞紙が配られていました。
 先生「新聞紙は細く長く破ることができますよ。誰がいちばん長く破れるかな?」

 実際にやってみて長く割けることを知った子どもたちから「おおーっ」と驚きの声が上がります。「お部屋中に千切った新聞紙を撒き散らしてよい」という、多分おうちでは決して許されない設定(笑)に大歓声が上がりました。ここでは自然発生的に新聞の海で泳ぎ回る子どもたちがいましたよ。

 このクラスでは細長く千切った新聞紙をやはり大きなビニール袋に回収したあと、新聞風船として、バレーボールのようについて遊んでいました。

 雨だからといって子どもたちは憂鬱でも退屈でもありません。お宅でも○○家バージョンの雨の日遊びをお子さんと一緒に創作してみてくださいね。

 お子さんが二人いるお宅では、普通の新聞じゃんけんのあと、お父さんと子ども、お母さんと子どもの組に分かれてやると楽しいものです。一人っ子のお宅では、お母さん対父子組で。じゃんけんに負けて新聞のサイズが小さくなってきたら、子どもを抱っこしたりおんぶしたり肩車したりして、スキンシップいっぱいの遊びになります。

 年長さんなら折り紙のレパートリーも増えているでしょうから、新聞紙やチラシを使った大型折り紙を。親子で本を見ながら新作に挑戦すると、どうやって時間をつぶそうかと心配していたのが嘘のように時間が過ぎていくことでしょう。

(文:西東桂子/絵:山本花子)


行事に込められた意味

《 2010年12月1日 》

 幼稚園では、年間をとおしてさまざまな行事がありますね。運動会が終わった秋から2月にかけては、お遊戯会や音楽発表会、クリスマス会、子ども発表会などの名称で、“舞台系”の行事が予定されている園が多いことでしょう。

  「今年は主役なの? すごいね!」と褒められた子がいる一方で、「え、タンバリンなの? 去年は鈴だったよねぇ。大太鼓がいいって言わなかったの?」なんて責められた子もいるのでしょうか……。あるいは、すでに終了していて、「うちの子はせりふが一つしかなかった。ほかの子は三つも四つもあったのに」と怒ったりがっかりしたりしているお母さんもいらっしゃるでしょうか……。

ところで、行事って、なんのためにあるのでしょうね。

★子どもの成長を確認する機会

10121  普段の保育を見る機会はそうは多くない保護者にとって、行事は、子どもの成長が確認できる大切な節目、絶好の場面であるのは間違いありません。いつの間にかこんなことまでできるようになっていたんだなぁと、大いに感動してほしいものです。でも本当の成長は、行事の当日よりむしろ、当日に至るまでのプロセスの中にこそあるのだ、というお話を今回はしたいと思います。

 たとえば劇をやるとして、役決めはどのように行われるとお思いですか? 担任の先生が指名していくと思います? そう思っていらっしゃると、冒頭のような不満のつぶやきがもれるかもしれませんね。なかにはそういう幼稚園もあるかもしれませんが、多くは、子どもたち自身が決めていると考えてよいのではないかと思います。そういうシーンを何度もこの目で見てきました。

 年少さんは特に役決めがなくて全員揃って登場したり、あっても動物を演じることが多いので、リスやウサギ、キツネやオオカミと、「やりたいものをやる」のが普通。なぜかキツネ役の希望者がとても多かったら、急きょクマ役を設定したりすると自然と半分に分かれて、だいだいどれも同数に収まって決着します。

 年中さんになるとストーリー性のある劇になってきますが、基本は「立候補」で、やりたいものを演じます。年中さんでは、人数に偏りが出ると先生が上手に誘導(人数が足りない役柄の“おいしい”ところを解説したり)して調整することもたまにはありますが、決して無理強いはしません。

 年長さんともなると、子どもたちで相談して決めるようになり、役決めだけでなくストーリーのアレンジまですることがあります。やはり基本は「立候補」ですが、時には「あの役は○○ちゃんがぴったりだよね」と「他薦」で決まることもあります。こうした様子を見ていると、1年1年の成長って大きいなぁと、しみじみ実感します。

★一人ひとりが考え、そしてみんなで考える

 年長組での役決めの日、こんなことがありました。A役・B役・C役をそれぞれ2人ずつ決めなくてはならないところ、今はA役に3人、B役に2人、C役に1人の立候補者がいます。大人の発想では、A役の3人のうちの1人がC役に移ってくれれば丸く収まるのになと思ってしまうものですが、この3人は皆、C役はやりたくないと考えているようです。さてどうなるだろうかと見ていると、B役に立候補していた子が「私はC役でもいいよ。A役の3人のうち、B役でもいいという人はいない?」と言いました。すると、「それなら僕、B役にするよ」と応じた子がいて、見事に2人ずつに決まりました。

 人間って、「第一希望か第二希望を叶えたい。でも第三希望になったらガッカリだな」という気持ちになることがよくありますよね。5~6歳にして、こうした感情の機微がわかる子どもがいるのです。子どもだからと侮れません。

 年長組の別のクラスでは、すべての役について、配役数と立候補者数が合っていませんでした。でも、いちばんの問題は、A役(1人)を希望する子がいないという点です。先生は「A役をやってもいいという人が見つかってから、ほかの役を決めようね」と言い、話し合いがもたれましたがその日も翌日も決着せず、翌々日となりました。おうちで考えてきたのでしょうか、ある子が言いました。「誰もやらないなら僕がA役をやるよ。だからみんなも、ちゃんと考えて役を決めてね」。

 そのあと、あちこちで移動があり、最後には予定どおりの配役数で全員の役が決まりました。“見もの”だったのはそれからです。先生が「うまく決まったね。最初に○○くんがA役を引き受けてくれたからだね。○○くんの勇気にみんな感謝しなくてはいけないね」と言うと、子どもたちから声が挙がりました。「そうだ、合奏のときにどの楽器をやるかは、○○くんがいちばん先に決めていいことにしたらどう?」「そうだ、そうだ」「それがいいね」「○○くん、好きな楽器を選びなよ」。○○くんは嬉しそうにうなずきました。先生も嬉しそうでした。

★個性が発揮される場でもある

 親は、晴れの舞台でわが子が主役を張ってくれたら、と望んでしまいがちですが、面白いことに子どもたちにとっては主役が人気とは限りません。

 「鬼の役が強くてカッコいい」と思う子もいれば、「この役は舞台の真ん中でダンスが踊れるから最高なの」という子もいるし、「僕はせりふは苦手だけど、ぐらぐらしないで立っているのは超得意だから木の役がいいな」という子もいます。なかには配役には全然興味がなくて、「海を表現するには青いテープを何本も組み合わせて、ところどころに銀色の折り紙を切って張って、こういうふうに動かすと本物みたいに見える」と、大道具や美術監督のような役割に情熱を燃やす子どももいます。この子は舞台に上がらなくてよいと言い張りましたが、先生が「大道具だけだとお客様に一度も顔が見えないから」と懇願し、魚になって一度だけ舞台を横切ることで手打ちとなりました(笑)。

 1人しかいない大太鼓やシンバルは荷が重いという子もいます。そういう子が、年少のときは8人いる鈴を担当し、年中で4人いるタンバリンを担当したなら、大きな成長なのですね。

 こんなふうに、発表会が開催されるまでにはさまざまなドラマがあります。どの子も考えたうえで決めた役です。観客はわが子の配役に一喜一憂するのではなく、クラスのまとまりに成長を感じていただけたらと思います。盛大なる拍手と「今日はあなたもクラスのみんなも、すごく素敵だったよ」の声掛けをよろしくお願いいたします。
 末筆ながら、舞台裏で大きなドラマがあったときは、先生はもっともっと保護者に公表したらいいのになと思う私です。

(文:西東桂子/絵:山本花子)


運動会の楽しみ方とマナー

《 2009年9月1日 》

9月から10月にかけて、運動会が行われる園が多いことでしょう。子どもたちをよ~く見て、親子でいい汗をかき、クラスのお母さんお父さんたちと交流を深めて素敵なコミュニケーションを楽しんでくださいね。

★大事なのは親の声がけ

 以前、ある育児雑誌が「運動会でいちばん感動したプログラム」をアンケート調査したところ、圧倒的多数で1位はリレーでした。リレーにも、年長リレー、全員リレー、親子リレー、保護者リレーなどいろいろありますが、応援する側も思わず力が入ります。私の息子が通った園では、年中と年長の子どもたち全員が2組に分かれての紅白リレーがあり、小さい子どもたちは「大きくなったらリレーに出られるんだ」と胸をときめかせながら応援したものでした。

1_2 最近では、リレーはあっても、かけっこを取り止める園もあります。園に理由を伺うと、保護者から「小さいうちから順位をつけるのはいかがなものか」という意見が出て、それを酌んだ結果だということも少なくありません。

私は個人的には、順位をつけて何が悪いと思っています(笑)。だって、多くは3位までですもの。クラス全員に1番からビリまで順位をつけるのは、それはおかしなことですが、3位までに入った子をほめてあげるのは、そんなにいけないことでしょうか。

 順位をつけることに反対する保護者たちは、発表会などでも同様のことを言い出します。それらの意見に屈した(?)園では、白雪姫の役の子が5人いたり、浦島太郎が3人いたりしてヘンテコなことになってしまいます。

子どもたちは、かけっこに負けたからといって卑屈になったりはしません。逆に「○○ちゃんは足が速くてすごい!」と尊敬の念を抱くのです。私たち親も、この純真さを見習いたいものです。かけっこが速い○○くん、台詞(せりふ)が上手な◇◇ちゃん、お絵描きが得意な□□くん、アイデア豊富な△△ちゃん……と、それぞれの個性をおおいに認めてあげてはいかがでしょう。わが子を個性豊かに育てたいと思うのなら、よその子の個性も認めてあげなくては。園側でも、一年を通したさまざまな行事の中で、その子がいちばん輝く場面をきっと作ってくれるはずです。

でも、いちばん大切なのは、「がんばったこと」「誇らしく思ったこと」「楽しめたこと」「悔しいと思ったこと」など、子どもの気持ちそのものを丸ごと受け止めてあげる親がそこにいる、ということなのだということも覚えておいてください。運動会では、たとえかけっこがビリでも「最後まで一生懸命走れたね」、転んでしまっても「泣くかと心配したけど、よくがんばれたね」、1番じゃなくても「去年よりすごく速くなったねー」と具体的に話してあげると、子どもたちの励みになることでしょう。

★マナーを守って子どもたちの手本に

 運動会は楽しい行事ですが、教育的配慮がなされた時間でもあります。わが子中心に行動してしまうことのないよう気をつけたいものです。

むやみに園児席に近づかない。ほかのクラスの演技を見たり、応援したりするのも保育の一環。親がそばにいると、本人だけでなく周りの子どもたちも集中できません。

席は譲り合いを。早朝から場所取りに燃える方もいらっしゃいますが、前のほうのよい席が取れても、自分の子どもの出番でないときにはほかの方と交替してあげるなど、譲り合いの気持ちを大切にしましょう。

撮影には気を配る。自分の後ろにたくさん人がいるのに、ビデオの三脚を立てたり、デジカメを両手で高く持ったりしてはご迷惑。競技中にグラウンドに立ち入るなんて論外です。

大きな声援を。ビデオやカメラに夢中になって、子どもたちへの声援が少ない、なんていう本末転倒なことのないように。ファインダーの中に切り取られたわが子だけを見るのではなく、この目で、わが子と全体の両方を見て成長を喜ぶのが基本です。

集合はすばやく。保護者参加競技への案内アナウンスがあったら、すみやかに集合場所へ。親がぐずぐずしていては、子どものお手本になりません。子どもは自分の親が一緒に楽しんでいる姿を見るのはうれしいし誇らしいので、積極的に参加してあげて。

ゴミは各自持ち帰る。終了後の園庭に空き缶やたばこの吸殻が散乱しているようでは恥ずかしい。特に、近くの小中学校を借りて行われたような場合は、感謝をこめて朝よりもきれいにして帰りましょう。

係の人に感謝を。園によっては、PTA役員のほか、運動会係、運動会委員などを務める保護者がいらっしゃることもありますね。運動会のスムーズな進行は係の方々のお力添えのおかげです。「ありがとうございました」「お世話様でした」のお礼の言葉をぜひ掛けてあげてください。もちろん、係でなくても、後片付けなどできることはみんなで力を合わせましょう。

今年の運動会、全国の園で晴天に恵まれますように!

(文:西東桂子  絵:山本花子)