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「初体験」の価値

《2015年1月1日》

 明けましておめでとうございます。2015年のスタートです。今年はどんな年にしたいとお考えでしょうか。

 私は50歳になったころから、「今までに経験したことのないことをやってみる」ことを意識するようになりました。つまり、初体験のすすめ、ですね。「継続は力なり」ですから、長く続けることにも大きな価値がありますが、トシだからと新しいことにチャレンジしないのはもったいないなと思ったからです。

 といっても、何も大上段に構えなくとも、たとえば新作映画を見たり、本を読んだり、話題のレストランに出向いたり、旅に出たりすれば、初めて見る映画、初めて読む本、初めて味わう料理、初めての土地ですからすべて初体験になりますね。初対面の人と交流するのだっていい。大人になると、新しいことは家の中より外に多いので、出不精にならずに外に出ていこうという所信表明でもあります。

 近年の大きな初体験は、一昨年、仲間たちと一般社団法人を設立したこと。終活をテーマにしながら、“50歳を過ぎたらボランティア精神で”を合言葉に、得意分野で社会貢献していこうと作った団体です。設立から1年半が過ぎましたが、ここでの取り組みはすべてが初めての体験で、失敗や反省も多いのですがやりがいがあります。

 また、昨年の初体験で印象深いのは、東京ドームで都市対抗野球の応援をしたこと。全国から予選を勝ち上がってきた企業や役所のチームが東京ドームで激突するのですが、プロ野球とはまた違った独特の熱気がありました。友人が勤務する地方の企業チームが決勝トーナメントに出場することになり、上京した友とともに応援しましたが、私も社員になったような気分で、試合が終了したときには声が嗄れていました。忘れられない体験です。

 今年も、新たな体験を積み重ねていきたいと思っています。

★子どもは毎日が新しい体験

Photo トシをとってくると、こうして意識して動かないとなかなか新しいことに出会えませんが、子どもは違います。すべてが初めての体験と言ってもいいくらいですね。

 入園すると、登園したら上履きに履き替え、カバンをロッカーにしまい…といった繰り返しの事柄はもちろんありますが、先生が「初めての○○にチャレンジするのは今でしょ!」とばかりに発達過程に合わせた教育(遊び)をタイミングよく導入していくのは、親にはなかなか真似できないプロの仕事です。

 年少のころには無理でも、卒園するころには縄跳びができたり、ルールのある遊びができたり、みんなで相談できたり、相手を思いやることができたりと、見違えるように成長していきます。

 家庭や家族での初体験もたくさんありますね。初めての食材を口にしたり、初めて野菜の皮むきをしたり、包丁を使ってみたり。お母さんに折り紙を教えてもらったり、お父さんと自転車の練習をしたり、家族で遊園地に出かけたり、朝日が昇るところを見たりと、「初めて」がどんどん積み重なっていきます。

 でも大人と違うのは、子どもの「初めて」のほとんどは、子ども一人では体験できない点です。つまり、親が付き合ってあげて初めて、子どもの「初めて」が成立するのです。それを面倒だと思ってしまうと負担感が増しますが、親にとっても「子どもと一緒にやる初めてのこと」ととらえれば、ともにわくわく感を楽しめるのではないでしょうか。

★「初めて」に慎重な子どももいる

 ある年の4月のこと。幼稚園に入園してきたAくんは一人っ子で、外遊びよりも部屋遊びが好きな子どもでした。声をかけて園庭に誘い、「すべり台で遊ぼうか」と言うと、「僕、いい」。「ジャングルジムはどう?」と言っても「ううん、いい」と、砂場にへばりつきます。ちょっとした予感があったので、「先生、そろそろすべり台に行ってみたくなったなあ」と何度か誘ってみると、「僕、高い所が怖いから、いいの」。あら、やっぱり!

 Aくんのお母さんからとても慎重なイメージを感じ取っていたので、もしかしたら「高い所は危ないから気をつけてね」という子育てをしていらしたのかもしれません。

 「先生が付いていてあげるから、絶対怖くないようにしてあげる」と約束し、最初はすべり台の階段を上るのはやめて、私がすべり台の横に立ち、下から1mほどの所から体を支えたまま下まで移動することから始めました。これを何度も繰り返したあと、次に、瞬間的に私が手を離し、1mをすべり下りる間に3回ほど支えるという段階を経て、次は下から2m地点からスタートして同じことを繰り返しました。

 この幼稚園のすべり台は階段の上にけっこうなスペースがあるので、次には一緒に上って、お友達が次々にすべり下りていくのを横目で見ながら、上で長い時間おしゃべりして過ごしました。そしてようやく、「それじゃあ、階段を下りようか。それとも、先生のお膝の上に乗って一緒にすべってみる?」と声をかけてみると、「下までずっと一緒? 絶対離さない?」の確認のあと、とうとう一緒にすべることができました。

 この日、私が付き合ったのはここまで。担任に話をつないでおいたので、その後数日は担任が一緒にすべってあげたようです。1週間後に行ったときはAくんのほうから「僕、すべり台、すべれるようになったよ」と報告してくれて、時々ブレーキをかけながらでしたが、上から一人ですべってみせてくれました。

 子どもの性格は一人ひとり違います。新しいことに物怖じせずに挑戦していく子もいますし、新しいことには慎重な子もいます。どちらも個性です。わが子が慎重なタイプだった場合、ほかの子と比べて「情けない」とか「臆病ね」と思って終わりにするのではなく、「慎重なんだな」と認めて、最初の一歩の不安感を取り除くお手伝いをするのが親の務め。園では先生がフォローしますが、おうちでの体験を増やしてあげられるのはお父さんお母さんです。

 慎重なタイプの子どもほど、「初めてできた」喜びは人一倍大きいものです。それが自信につながり、やがて「ちょっと不安だけど、頑張ってやってみようかな」という意欲につながっていきます。

 「今年は何をやってみる? 今から楽しみだね」「今年はお母さん、あれやってみたいな。一緒にやってみようよ」――お正月にそんな会話を親子でぜひ交わしてくださいね。幼児期にしかできない体験を逃してしまわないように! 素敵な一年になりますように。

(文:西東桂子/絵:山本花子)

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