ニッポンそば紀行「山形の蕎麦(2)」
2016年11月26日
★山形駅東口『山口精肉・製麺センター』
パッと咲いてパッと散る「蕎麦仁義」
この日は午後から山形市・みなみやまがた幼稚園の創立50周年祝賀会。そこで午前中は、前日のカロリーオーバーを少しでも減らそうと、明治の面影が残る山形の街を歩き続けた。そして山形駅に戻った時、小腹が空いた。
駅ビルの1階に三津屋という立派な蕎麦屋があった。しかし一番安いたぬき蕎麦が730円。私が立ち入れる店ではなかった。
探し回って、ようやく東口駅前商店街に「牛丼とそばの専門店、山口精肉・製麺センター」の暖簾を見つけた。しかしここも高い。「(食べ放題でないかぎり)蕎麦は500円以内」という私のルールに適うのは、かけ蕎麦490円だけだった。

注文を聞いた塾頭(この店では店員を塾頭というらしい)が「かけ蕎麦一丁!」というと、厨房の塾長(店長は塾長というらしい)が「へ~い、かけ蕎麦一丁!」と応えた。エビ天蕎麦やスタミナ牛丼を食べていた塾生達が、一斉に私を見た。
蕎麦は変哲のないものだったが、器は変形し、洒落た木製のレンゲが付いてきた。しかしレンゲは汁を掬い取る用をなさず、縁の変形した器は、口をつけて直接飲むことも難しく、汁の大半を残さざるを得なかった。塩分取りすぎを戒める健康塾であることがわかった。

勘定を済ませると、天袋の戸棚に塾長直筆の「仁義」の書が貼ってあった。
文面は「たった一度の人生を、世間の顔色うかがって、やりたい事もやらないで死んでいく身の口惜しさ。どうせもらった命なら、一花咲かせて、気持ちよく散ってやる」という鉄砲玉根性を讃える文章だった。
一杯のかけ蕎麦に込められた塾長の覚悟に感服し、菅原文太の気分で塾を出た。

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