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手術の話

2013年3月1日

思わぬクリスマスプレゼントとなった「老人性鼠径ヘルニア(=脱腸)」。文字どおり断腸の思いで決断し、2013年2月19日(火)、隣町の済生会習志野病院で人生初めての手術を受けました。その体験の一部です。

入院初日の難関は下の毛の処理でした。不安とも違うモヤモヤ感の要因でもありました。その顔色を察して「どうします?自分でやりますか。でも後で私が念入りにチェックしますよ」と言うので、意を決して柴咲コウに似た看護士さんに身を委ねました。

ほとんど眠れなかった夜が明け、朝6時に浣腸。これまた初体験でした。「5分は我慢するのよ」との指示を守り、歯を食いしばって耐えました。トイレから出ると腸内を風が吹き抜け、と同時に得も言われぬ不安も吹き飛びました。

予定時間がずれ込み、立ち会いの娘・孫たちに見送られて手術室に入ったのは14時10分。大きなドアが両側にバーンと開き、さらにもうひとつのドアがバーンと開いて、天井に丸いライトが煌々と灯る手術室が現れました。

130222_2男5人、女4人の手術スタッフが全裸の私を見下ろして順に挨拶してくれます。思わず「おお、ベンケーシーの患者役になった感じです」と言ったのですが、1960年代の米TVドラマを知っている人は誰もいませんでした。皆、30代だったのです。仰向けながらも、医療現場を支える若者の奮闘に頭が下がりました。

「カッコいい外科医でしたよ。当時のベン・ケーシー(写真=ビンセント・エドワーズ)も30代だったと思います」の言葉に、執刀のU医師は気をよくしてくれたようです。しかし手術は長引きました。

45~60分と聞いていたのに90分たっても終わりません。何かあったとき、本人に代わって意思表示できる血縁代表として待機していた娘は、「何かあったに違いない」と覚悟したそうです。手術室から運び出されたのは16時20分。2時間10分の手術でした。

宿主同様、気の小さい脱腸くんが奥に隠れたため、腹筋の裂け目を特定するのに時間がかかったようです。「お腹に力を入れて」「咳をしてみて」と言われても麻酔で感覚のない身体には無理な話。ようやく「あ、ここだ」の声を聞いたときはホッとしました。

裂け目の内側に平たい樹脂板とメッシュシートを差し込み、腸の出入りを遮断するというのが手術の内容です。18時頃から麻酔が切れ、お腹の傷口が痛み始めました。耐えられなかったのは麻酔を打った背中の傷口。床ずれ症状も加わって、夜中に二度、痛み止めの点滴を懇願しました。自分の情けなさに呆れました。

「院内感染には万全を期している」とのことで、連日孫たちがお見舞いに来てくれたのは嬉しいことでしたが、病棟の広い廊下を元気に走り回ってくれるのでハラハラし通しでした。手術から三日目の午後、大急ぎで退院し、我が家の寝袋にもぐり込んだ時、ようやく安堵感に浸り、翌日の朝までドロのように眠りました。

鼠径ヘルニアは、60歳以上の男子が毎年約15万人手術しているそうです。500人に1人の確率です。該当年齢の方はくれぐれも“年寄りの冷や水”をしないようご留意ください。

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▲上の写真はイメージです。手術室には裸の身体以外何も持ち込めませんのでカメラ撮影はできませんでした。私のときは研修医を含め計9人のスタッフがいました。


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